カエル好きに朗報。ヤドクガエルの新種が2種発見される
image credit: <a href="https://zookeys.pensoft.net/article/146533/" target="_blank">M&ocirc;nico et al., 2025, ZooKeys 1236: 51-83.</a>

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 ヤドクガエルはいかにも「毒持ってます」的な、カラフルで毒々しい配色の体色を持つカエルである。

 その鮮やかな姿から愛好家も多く、「跳ねる宝石」などと呼ばれることもあるが、見た目から受ける印象通り、強力な毒を持っていることでも知られている。

 2025年に入り、アマゾンの奥地で新たに新種のヤドクガエルが見つかったというニュースが飛び込んで来た。

 しかも極めて近いエリアで、2種の新種が確認されたのだそうだ。

 現在、ヤドクガエルは世界で約200種ほどが確認されているそうだが、そのリストに新たに名を連ねることになった2種を紹介しよう。

ブラジルで発見された2種の新種ヤドクガエル

 ブラジル西部のペルーとの国境付近を流れるジュルア川流域で、ヤドクガエルの新種が相次いで2種発見・登録された。

 これらの新種はそれぞれ2025年4月25日付の学術誌『ZooKeys』[https://zookeys.pensoft.net/article/146533/]、および2025年5月14日付の『PLOS One』[https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0321748#abstract0]に掲載された論文で紹介された。

ラニトメヤ・アクアマリーナ

 1種は「ラニトメヤ・アクアマリーナ(Ranitomeya aquamarina)」という学名がつけられた新種で、黒地にメタリックなターコイズブルーの縞模様が入っているほか、四肢には赤褐色の斑点がちりばめられている。

 植物の葉の根元などに溜まった水に産卵し、オタマジャクシもそこで育つ。両生類では珍しい一夫一婦制をとっていて、オスとメスは長期間一緒に過ごす傾向があると見られている。

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ラニトメヤ・アエテレア

 もう1種は「ラニトメヤ・アエテレア(Ranitomeya aetherea)」という学名で、アクアマリーナに比べると褐色がかった地に明るい空色の縞模様が入っている。

 アクアマリーナとは違い、オスは一般的に単独で生活し、繁殖期になると求愛の鳴き声を上げてメスを呼ぶという。

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一見そっくりだが近縁種ではなかった?

 体長は両方とも13~17mmほどで、1円硬貨よりも小さいミニちまサイズだ。見た目がとても良く似ており、また発見場所も近いことから、当初は近縁種ではないかと考えられていた。

 だが求愛時の鳴き声の音響分析や、遺伝子情報の比較により、最初に想定されたほど近縁種ではないことが確認された。

 アマゾン国立研究所の研究者で、両種の論文の共著者でもあるエステバン・ディエゴ・コッホ氏は、この2つの新種について次のように語っている。

このカエルたちの仲間は、非常に異なる種が同じ外観、つまり同じ色や模様を持つことがあります。さらに混乱を招くのは、時には単一の種が複数の色彩や模様を持つことがある点です。



2種のカエルは進化系統樹の異なる領域に分類され、それぞれが独立した姉妹種を有しています。しかし、彼らの正確な関係を確定するためには、さらに多くのデータが必要なのです

生息地に森林破壊による絶滅の危険が忍び寄る

 発見された場所は、ペルーとの国境に近いブラジルのジュルア川沿いである。辺鄙な場所にあるため、アクセスと研究が非常に困難な場所だ。

 現地の地図。中心付近を流れるのがジュルア川で、水色がアエテレア、緑がアクアマリーナの発見場所である。

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 この2種が属するラニトメヤ属は16種で構成されていたが、10年以上新種が追加されていなかった。

 これは主に、個々の種の外観や種内での一般的な変異に関する混乱があったのと、彼らが生息する地域へのアクセスが困難であることによるものだ。

 下はメタリックな縞模様が美しいアクアマリーナ。

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 そしてこちらは、アクアマリーナに比べると赤褐色な色彩のアエテレア。並べてみると、確かに色味にはかなり違いがあるようだ。

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 このヤドクガエルたちの調査は2023年と2024年の2回行われたが、研究者たちはその間の1年で、彼らの生息場所に大きな変化が近づいていることに気づいた。

 人間による開発の足音が彼らの生息域に確実に接近しており、大規模な森林伐採がその存在を脅かしているのだ。

 今回発見された2種のヤドクガエルの生息地は、わずか数kmしか離れておらず、それぞれの個体数は多くはないと考えられている。

 研究者たちも、彼らが種としてどれほどの危険にさらされているのかを判断するに足る十分な情報を持っていない。

 彼らの種の保全のためにも、さらなる詳しい調査が待たれるところである。

References: A remarkable new blue Ranitomeya species (Anura: Dendrobatidae) with copper metallic legs from open forests of Juruá River Basin, Amazonia[https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0321748] / An Amazonian hidden gem: a new metallic-colored species of Ranitomeya (Anura, Dendrobatidae) from Juruá River basin forests, Amazonas state, Brazil[https://zookeys.pensoft.net/article/146533/]

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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