黒かわいい、ジェンツーペンギンのヒナの珍しい黒変種を南極で発見
真っ黒なジェンツーペンギンのヒナ<em> </em>image credit: Laura Bogaard

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 2025年の冬、南極のロンジェ島で全身が黒い毛でおおわれた、ジェンツーペンギンのヒナが発見された。

 これは「黒変種(メラニズム)」と呼ばれるメラニン色素の過剰産生によって発生する現象だが、ジェンツーペンギンでは極めてまれな例である。

 南極のペンギンの個体数調査を行っているオーシャナイツ(Oceanites Inc.)の研究チームによると、このヒナはすくすくと元気に成長しているという。

黒変種(メラニズム)とは?

 黒変種(メラニズム)とは、動物の体内でメラニン色素が過剰に生成され、通常よりも体が黒く見える現象を指す。

 これは遺伝的な要因によって生じ、哺乳類や爬虫類、鳥類などさまざまな種でまれに見られる。

 逆にメラニン色素が部分的に欠落すると「白変種(ルーシズム)」、完全に失われると「アルビノ」となる。

 黒変種は、生態系や環境に応じて進化的に定着する場合と、稀な突然変異として現れる場合がある。

 例えば、クロヒョウは東南アジアやアフリカの森林地帯において、暗い環境に適応して黒変種が比較的多く見られることがある。これに対して、開けた地形や視認性が求められる環境では黒変種が不利になる可能性もある。

 ペンギンは通常、背中が黒く腹が白い「カウンターシェーディング」と呼ばれる配色をしている。

 これは捕食者から身を守るための保護色で、海中での視認性を下げる役割があるため、全身が黒くなることでこの効果が失われ、水中では捕食者から発見されやすくなる。

 だが黒変種だからといって必ずしも健康や成長に不利になるとは限らない。今回のジェンツーペンギンのひなも、兄弟と同様に元気に成長しており、オーシャナイツ(Oceanites Inc.)[https://www.oceanites.org/]によると、観察された時点では健康状態に問題はなかったという。

 だし、ペンギンにおける黒変種は非常に稀でその生存率や長期的な影響についてはまだ十分に解明されていない。そのため今回のような発見は、今後の研究にとって重要な実例となる。

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黒のヒナ、きょうだいと一緒に元気に成長中

 この珍しい真っ黒のヒナを最初に発見したのは、Black Bawks Data Science[http://blackbawks Laura Bogaard]のローラ・ボガード氏だ。彼女は米国科学財団(NSF)の研究許可のもと、オーシャナイツの一員として南極でペンギンの個体数調査を行っていた。

 「丘を登っているときに、他のひなとは明らかに違う子を見つけて思わず二度見しました」とボガード氏は語っている。

その場に座り込み、写真を撮りながら黒い体とピンクの爪、かわいらしい表情を観察しました(ボガード氏)

 ヒナは全身真っ黒ではなく、部分的に通常の羽色も見られたが、もう1羽のきょうだいと比べると明らかに異なる外見をしていたという。

 この黒変種のヒナは、毛色は違う者の、健康に育っていると報告されている。

 「時には、2つの卵から1羽だけが大きく健康に育つことがありますが、今回の親ペンギンは2羽ともきちんとふっくら育てていて、よく世話をしていました」とボガード氏は述べている。

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今年に入って2例発見されたジェンツーペンギンの黒変種

 黒変種のジェンツーペンギンはこれまでにごく少数しか確認されておらず、学術的に記録されているのは過去2例のみだ。

 オーシャナイツによると、2025年にはこのロンジェ島のヒナに加えて、ここから約20km離れた南極半島本土側の入り江、ネコ・ハーバー(Neko Harbor)の別のコロニーでも黒変種のひなが見つかっている。

 オーシャナイツの科学ディレクターであるグラント・ハンフリーズ氏は、「これまでに公的に記録された黒変種のジェンツーペンギンは2例しかありませんでしたが、今年は私たちのチームだけで2羽を確認できました」と述べた。

 また、「いずれも健康に育っており、別の黒変種の若鳥が最近観察された例もあります。冬を越えて来年も見られるかが楽しみです」と今後の調査に期待を寄せている。

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 ジェンツーペンギンは、アデリーペンギン属に分類される中型のペンギンで、頭部にある白い帯模様とオレンジ色のくちばしが特徴である。性格は比較的穏やかとされている。

 今回の調査に参加していた別のペンギン調査員、メアリ・ヒルトン氏は「ジェンツーのひなはとても好奇心旺盛で、時には私たちのところにヨチヨチと歩いてくることもあります」と話す。

 また、「ジェンツーはコロニー内でも比較的静かで、鳴き声もロバのようにやや低めで刺さる感じが少ないんです。ドイツ語で『Eselspinguin(ロバペンギン)』と呼ばれているのもそのためです」とも付け加えた。

 ジェンツーペンギンの鳴き声は以下の動画で聞くことができる。

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