
紀元前27年に国家となり、最盛期には地中海全域を支配し、ヨーロッパ・中東・北アフリカにまで影響を及ぼしたローマ帝国。その支配は都市建設、法律、軍事だけでなく、食卓にまで及んでいた。
では当時ローマ帝国の人々はいったい何を食べていたのか?
当時の料理を再現した、期間限定のイベントが、2025年5月18日、アメリカ・オレゴン州ポートランドのレストランで開催された。
その名も「Salona(サロナ)」。これはローマ帝国時代に存在した都市の名で、古代ローマの食卓”をテーマに、現代の人々に当時の料理を体験してもらう試みだ。
ローマ帝国が残した遺産といえば、コロッセオのような建築物、法制度、道路網、軍隊、宗教制度などがすぐに思い浮かぶ。
だが、その巨大な社会を日々動かしていたのは、無数の人々が日常的に繰り返していた「暮らし」であり、食べるという行為もまた、帝国の構造を支える大きな柱だった。
食材の調達や調理法、味付けの工夫は、広大な帝国のあちこちで暮らす多様な民族のあいだに、共通の味覚体験や食習慣を育て、つながりを生む役割を果たしていた。
古代ローマの食卓には、支配地域からもたらされたさまざまな食材や調味料が並び、その多様性は現代のグローバルフードを先取りしていたともいえる。
しかし、そんなローマの食文化をリアルに体験できる機会は、現代ではほとんど存在しない。
古代ローマの味を現代に蘇らせた期間限定のレストラン
そんな中、オレゴン州ポートランドのシェフ、キャラウェイ・アレクサンダー氏が、ローマ時代のレシピ資料をもとに料理を再現し、一日限りの期間限定レストランで提供するイベント「Salona(サロナ)」が開催された。
この試みは、単なるイベントの枠を超えた、歴史と味覚の融合でもある。
アレクサンダー氏は、イタリア料理店での勤務経験をきっかけに「古代の人々は何を食べていたのか?」という問いに興味を持ち、文献を読み解きながら独自にレシピを構築した。
何か月にもわたる試作と調整を経て、ついに形となったのが「サロナ」なのである。
当日出されたメニューは?
初回の「サロナ」は2025年5月18日、午後2時から6時にかけて、ポートランドの「Mayfly[https://www.mayflypdx.com/]」で行われた
イベント当日に提供されたメニューの一例は以下の通り:
- 豚バラ肉の赤ワインソースがけ + スペルト小麦の粥(ポリッジ)
- 大麦衣で揚げた鶏手羽先 + ブドウ果汁(グレープマスト)
- 赤ワイン・魚醤・オリーブオイルで作るサラダドレッシング「オイノガルム」
これらの料理にはトマトやナス、パスタ、チョコレート、コーヒー、唐辛子などが一切使われていない。
というのも、トマトは南米原産で、ヨーロッパに持ち込まれたのは16世紀以降。
代わりに使われるのが、ハチミツや魚醤(ガルム)、古代小麦の一種であるスペルト小麦、さらにはセロリやラヴェッジ(Lovage)といった今ではあまり見かけないハーブ類だ。
また、古代ローマでは鳥や肉類はしっかりと食べていた。むしろ、階級や地域によっては非常に多彩な種類の肉が食卓に上がっていたという。
味の方向性としては、塩気と甘味、そして酸味が複雑に絡み合う、現代人の味覚にも新鮮に映る「異文化の味」だという。
今後も定期的に開催予定
サロナは常設店舗ではなく、不定期に開催されるポップアップレストランだ。
今後も同様のイベントを開催予定で、日程やメニューの詳細はInstagram(@salona.pdx[https://www.instagram.com/salona.pdx])で随時発信されている。
古代ローマの人々がどんな料理を食べていたのか?すごく知りたいよね。