燃え尽き症候群から看護師を救え!AIアシスタントロボットが台湾で実証実験開始

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 看護師たちが”燃え尽きる”ほど過酷なうえに、人手不足が加速する医療現場でもいよいよ人間と協働するロボットが活躍しそう。台湾の病院で、そうした未来を見据えたAIロボット実証実験が話題だ。

 そこで働く「Nurabot 」は、燃え尽き症候群(バーンアウト症候群) から看護師を救うために開発されたAIアシスタントロボット。ロボットの開発には日本の川崎重工も関わっている。

  Nurabot が得意とするのは、看護師にとって最も負担が大きいタスクの一部だ。

 オールマイティではないけれど、人間にとって体力的にキツイ仕事や運搬作業をこなすので、肉体な疲労はもちろん、一日何度も往復する時間や手間の軽減に役立つという。

燃え尽き症候群から看護師を救うAIロボット

 台湾を拠点とする大手EMS(電子機器受託生産)企業フォックスコン(鴻海科技)とアメリカ・カリフォルニア州を拠点とする半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)が、台湾の病院にて、看護師のアシスタントロボット Nurabot の実証試験に着手した。

 2025年5月18日に公開された台中市の病院 Taichung Veterans General Hospital(TCVGH)で、看護師と一緒に働くNurabot。

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 このロボット自体は、フォックスコンと川崎重工業の共同プロジェクトによるものだそう。

 燃え尽き症候群から看護師を救うために開発された Nurabot は、臨床ケアを行う看護師にとって最も負担の大きいタスクの一部を引き受ける。

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 大きな目がかわいらしいこのロボは、所定の場所まで薬を運んで届けたり、病棟を巡回するほか、来訪者の案内なども担当。フォックスコンによると、看護師の作業負荷を30%も削減できるという。

ロボット効果で看護師がより患者に集中

 TCVGHの看護部門副部長、Shu-Fang Liu氏はこのように述べている。

台湾は高度に発達した医療インフラを有し、デジタルヘルス変革への強い推進力も持つため、ロボット統合システムに理想的な環境が整っています

ロボットは私たちの能力を増強し、より集中的で意義のあるケアが提供できるよう支えてくれます。当院のある病棟では、Nurabotで 創傷ケアキットや健康教育資料を患者のベッドサイドに届けてますよ

おかげで看護師たちは、肉体的な疲労が軽減され、備品室へ何度も往復する必要もなくなり、より患者に集中できるようになります

現場では患者の看護アシスタント機能の要望も

 Nurabot は、面会時間も夜勤も問わずに働いてくれ、人手が足らない時の負担も減らしてくれる。

 看護師たちは、この先こうしたロボットが、複数の言語をマスターし、あらゆる患者と会話できるようになったり、顔認証を備えたり、さらには患者の看護を手伝ってくれることなどを期待している。

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 実際、肺疾患のある患者の呼吸訓練を行うだけでも2人がかりになることがある。

起き上がらせるのも一苦労。

 そんな時、 Nurabot が手を貸してくれれば、看護師1人で対応し、手が空いたもう1人が病棟の別の患者のケアに専念できる、というわけだ。

事前に仮想トレーニングや臨床ケアの最適化済み

 従来の病院にAI導入の先進的な病院への変革を勧めるフォックスコンは、この病院で Nurabot を使うに先駆け、NVIDIA の技術を駆使して病院用のスマートツールを構築した。

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 患者のバイタルを追跡する AI モデルや、省スペース設計に役立つデジタル ツイン技術といったシミュレーションツールを組み合わせた。

 それらで看護ステーションの1室のデジタルツインを構築。事前にレイアウトのテストを行い、 Nurabot の仮想トレーニングを済ませ、臨床ケアの最適化に役立てた。

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台湾の主な病院はすでにスマートシステムを導入

 より詳しく言えば、AIを活用したスマート病院のプロセスの起点はデータセンターにある。そこで巨大なAIモデルが NVIDIA のスーパーコンピューターでトレーニングされる。

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 その後、病院のバーチャルツインを使い、ロボットをテストして訓練。最後に、ネットワークの末端に接続されたデバイスが、これらのシステムをリアルタイムで実現する。

 NVIDIAの技術を基盤とするこのシステムは、TCVGH含む、台湾の主要な医療センターにすでに導入されており、病院の運営から診断、計画のあり方まで改新された。

医療業界の人手不足でロボットの需要増加の未来

 2024年5月3日、 WHO(世界保健機関)は「2030年までに燃え尽き症候群により看護師450万人が不足する」との厳しい警告を発した。

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 日本でも医療業界の人手不足が叫ばれてるが、こうした状況の中、看護師の負担を減らすAIロボットのニーズは増す一方といえそうだ。それにはまず、既存の病院のスマート化から始めるべきなのか。

 すでにあちこちで自動化が進み、ファミレスなどでもロボットが浸透する今、体力的にも過酷な医療現場に、人間を助け、支えるために協働するロボットがいる光景は、想像以上に早く見られるようになるかもしれない。

References: Interestingengineering[https://interestingengineering.com/health/foxconn-nvidia-drive-ai-robotics-innovation]

本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。

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