
2024年、アメリカの首都ワシントンD.C.にあるスミソニアン国立動物園に、新たに2頭のジャイアントパンダが仲間入りした。
中国からやって来たのは、当時3歳半のバオ・リー(オス)とチン・バオ(メス)だ。
お互いを隔てる柵越しから見つめあい、チン・パオが甘えたような声で鳴いているのだ。その姿はまるで、恋に胸をときめかせる乙女のようである。
オスのパンダの母親はアメリカ生まれ
オスのバオ・リーは2021年8月、中国・四川省の成都で生まれた。しかし彼の母親は、かつてこのスミソニアン国立動物園で誕生したバオ・バオだ。アメリカと中国のパンダ保護協力のもと、2017年に中国へ戻された彼女はその後、繁殖に成功し、バオ・リーを産んだ。
そんな背景から、バオ・リーは「アメリカ育ちの血を引くパンダ」として注目を集めていた。
そして2024年10月、同じく中国から来たメスのチン・バオ(2021年6月生まれ)とともに、米中間のパンダ保護協力プログラムの一環として貸与されることになり、再びスミソニアン国立動物園にやってきた。
繁殖には早すぎるため別々の飼育ブースで育てられている
バオ・リーとチン・バオは、現在も別々の飼育ブースで暮らしている。
これは、ジャイアントパンダが本来単独行動を好む動物であり、またまだ繁殖には早すぎる年齢であるためだ。
ジャイアントパンダは、一般的に5歳ごろから「成獣(せいじゅう)」とみなされ、交尾および繁殖が可能になるとされている。
バオ・リーもチン・バオも現在4歳になったばかり。実際の繁殖にはもう少し時間が必要だ。
とはいえ、2頭がお互いに関心を示すのは自然な成長の証でもある。
動物園では、過度な接触によるストレスを避けつつ、金網越しから覗ける窓を設け、2頭が無理のない範囲でお互いを認識できる環境を整えている。
金網越しから身を寄せる2頭、甘い初恋の予感
動物園によると、2025年4月下旬ごろから2頭は金網のある窓際を頻繁にのぞくようになったという。
さらにチン・バオは、バオ・リーを見つめながら「チューチュー」「メェー」と甘い鳴き声を発するようになった。
これは発情期に入ったメスのパンダが示す典型的なサインで、実際に尿サンプルの分析から、チン・バオが初めての発情期に突入していることが確認された。
一方、バオ・リーも窓越しからチン・バオの姿を頻繁に見つめるようになった。お互いに歩み寄ろうとする姿に、飼育スタッフからは「まるで初めて恋をする若者のようだ」との声があがった。
繁殖はまだ先、でも期待は大きい
ジャイアントパンダが実際に繁殖できるのは、あと1年以上先とは言え、お互いに好意を寄せているのは良い傾向だ。
ジャイアントパンダの発情期は年に1回、春(3月~5月ごろ)だけだ。しかもメスのパンダの発情期間はわずか2~3日と非常に短いため、自然繁殖は非常に難しいとされている。
動物園は「ここまで自然に惹かれ合うのは、とても良い兆候の現れです。将来の自然繁殖にも大きな期待が持てます」とコメントしている。
スミソニアン動物園が公開した動画を見ると、まだまだ2頭とも幼さが残るかわいさだよね。
日本のパンダたちはどうなる?
ちなみに日本では和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで暮らす4頭のジャイアントパンダが、日中の保護共同プロジェクトの契約期間満了に伴い、2025年6月28日、中国へ返還される予定だ。
返還されるのは、2000年に同施設で誕生したメスのジャイアントパンダ良浜(ラウヒン、24歳)とその娘の、結浜(ユイヒン、8歳)、彩浜(サイヒン、6歳)、楓浜(フウヒン、4歳)。
5月26日から検疫に入るため、アドベンチャーワールドでは5月25日、屋外での最後の公開を迎えた。
5月26日以降は、ガラスに囲まれた施設で公開されるとのことだ。
4頭が中国に返還されると、日本に残るジャイアントパンダは上野動物園のシャオシャオとレイレイの2頭だけとなる。
2021年6月23日に生まれた双子のシャオシャオ(オス)とレイレイ(メス)はもうすぐ4歳となり、2026年2月に返還期限を迎える。
もし返還されたら日本で見られるパンダはいなくなってしまうが、再びパンダがやってくるのかどうかは今のところ不透明だ。
それでも現在、茨城県や仙台市などが地域振興の一環としてパンダ誘致を進めているという。
References: #DCPandas: The Bears and the Bleats | Smithsonian's National Zoo and Conservation Biology Institute[https://nationalzoo.si.edu/animals/news/dcpandas-bears-and-bleats]
本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。