メガロドンはクジラだけでなく、目の前にある獲物を見境なく食べていた
メガロドンがサメ以外の魚を捕食するイメージ図

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 2,300万~360万年前の海に君臨した「メガロドン」は、すでに絶滅した巨大ザメだ。その体はリアルなモンスターとでも言いたくなるほどに巨大だ。

 ゆえにその狩猟はさぞやド迫力だったろうと思いきや、必ずしもそうではなかったかもしれない。

 新たな研究によれば、メガロドンは好き嫌いすることなく、目の前にあるものを見境なく食べていた可能性があるという。

 確かにクジラや大型の魚も食べていたが歯の同位体を分析した結果、もっと小さな生き物もその大口で平げる、柔軟な“なんでも食べる捕食者”という意外な実像が浮かび上がってきたのだ。

 この研究は『Earth and Planetary Science Letters[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012821X25001918?via=ihub]』(2025年5月26日付)に掲載された。

歯の同位体から探るメガロドンの食性

 メガロドンは2,300万~360万年前(前期中新世~鮮新世)の海で、生態系の頂点に君臨していたサメの仲間だ。

 その歯や椎骨の化石からは、最大で24mにも達したと考えられている。 現代の海の頂点捕食者ホホジロザメは最大7mほどなので、メガロドンがどれほど巨大だったのか想像できるだろう。

 その巨体ゆえに、おそらくはクジラのような大きな獲物を狙って食べたのだろうと考えられてきた。

 ところが最新の研究では、どうも想像とは違うメガロドンの食性が浮かび上がってきている。

 すでに絶滅した生物が食べていたものを探る手がかりの1つが「歯の同位体」だ。

 同位体とは、同じ元素ではあるが、原子核を構成する中性子の数が異なるものだ。

 実は歯に含まれる同位体の割合は、その生物が食べたものによって左右される。食べ物に含まれる金属元素が、微量ながら歯や骨のカルシウムの一部と置き換わるためである。

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メガロドンと現代のサメの歯の同位体を比較

 今回、ドイツ、ゲーテ大学フランクフルト・アム・マインのジェレミー・マコーマック氏らの研究チームが注目したのは、亜鉛の同位体である「亜鉛64」と「亜鉛66」の比率だ。

 食物連鎖の下層にいる魚は比較的多くの亜鉛66を体に蓄えているが、それを食べる魚は亜鉛66が少なくなる。つまり食物連鎖の頂点に近い生物ほど、亜鉛66の割合が小さい。

 メガロドンはその時代の海の頂点捕食者だったとされている。ならばこの傾向は彼らにも当てはまるはずだ。

 ところが、亜鉛同位体の比率を現代のサメと比べると、また違う事実が見えてきたのだ。

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食べるチャンスがあれば見境なく食べていた

 メガロドンが生きていた当時、食物連鎖の下層に位置していた生物について確かなことはわからない。そこで研究チームは、現代のサメの歯と比べることでメガロドンの食性を推定してみた。

 するとメガロドンと最下層の魚とでは、亜鉛同位体にそれほど違いがないことがわかったのだ。このことは、メガロドンに食べ物の好き嫌いはなく、なんでも食べていたことを示唆しているという。

 さらに興味深いことに、メガロドンの食性が地域によって異なることも明らかになった。たとえばドイツ南東部の都市パッサウで発掘されたメガロドンの歯は、食物連鎖の下層に位置する生き物をより多く食べていたことを示していた。

 こうしたメガロドンの食性からは、現代のホホジロザメにも似た機会主義的な狩猟スタイルがうかがえるという。

 つまり食べるチャンスがあれば、見境なくなんでも食べるということだ。

 だがそんなメガロドンが絶滅した要因の1つは、同じ生態ニッチを占めたホホジロザメとの競争だったと考えられている。

 米国デポール大学の古生物学者、島田賢舟教授は、「この研究は、地質時代を通じた海洋生態系の変遷を知る上で重要な手がかりになります」と語る。

 だがとりわけ重要なことは、「“超捕食者”ですら絶滅を免れないという事実」であるとのことだ。

References: Miocene marine vertebrate trophic ecology reveals megatooth sharks as opportunistic supercarnivores[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012821X25001918] / Megalodon: The broad diet of the megatooth shark[https://www.eurekalert.org/news-releases/1084399]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。

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