
何でもお見通しな恐ろしい時代の到来だ。約1.36km離れた場所にあるわずか約3mmの文字が読み取れる、驚くべきレーザー装置が開発された。
天文学で用いられる「強度干渉法」という光の観測技術を応用し、離れた場所にあるごく小さな文字や形を読み取れる精度を実現したこの技術は、今後の監視・観測分野に大きな影響を与える可能性がある。
この研究は、アメリカ物理学会の専門誌『Physical Review Letters[https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.134.180201]』(2025年5月9日付)に掲載された。
光の反射や干渉から画像を再構成
この装置の開発に用いられたのは、「強度干渉法」と呼ばれる技術だ。これは、天文学の分野で1950年代に初めて使われた観測手法で、複数の光検出器で受信した光の強さの変化を利用して、遠くの物体の形状を推定するものだ。
従来は恒星などの放射を対象としていたが、今回の研究では人工的に生成したレーザー光を使うことで、より精密な観測を可能にした。
中国・中国科学技術大学をはじめとする研究チームは、赤外線レーザーを8本に分割し対象物に向けて照射し2台の望遠鏡で観測し、反射光の微細な干渉を解析することで、対象の輪郭や細部を再構成することに成功した。
その結果、文字の高さが約3mmほどの活字の形を、1.36km離れた場所から正確に判別することができた。
8本のレーザーで驚きの解像度を実現
レーザーを1本だけ使った場合では、ここまでの解像度は得られなかったと研究チームは述べている。
8本のビームを組み合わせることで、干渉パターンの変化をより明確に捉えることができ、また大気による光の乱れにも強いという特徴がある。
これにより、夜間や遠距離からでも、人工的な光で照らされた非発光体の細部を読み取ることが可能になる。これは従来の望遠鏡や画像センサーでは難しかった分野だ。
発光しない物体でも観測が可能に
もともと、明るい遠方の恒星など、宇宙の天体観測に利用されてきた強度干渉法だが、最近では先端物理学の実験や地上での応用にも用途が拡がってきているという。
ただし近いものに関しては、これまで強い光に照らされた物体の観測に限られていた。だが今回の研究では、発光しない物体でもきちんと観測できるところが新しいそうだ。
研究チームはこの技術を、宇宙空間に漂うデブリ(宇宙ごみ)の観測にも応用できると見ている。地上からレーザーを照射し、その反射光を干渉解析することで、宇宙空間にある小さな物体の形や動きを把握することが可能になるという。
また、今後はAIを活用して、収集した干渉データをより正確に解析し、遠距離にある物体の形状を自動で認識できるシステムの開発も目指している。
References: Active Optical Intensity Interferometry[https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.134.180201] / This Laser Breakthrough Can Read Text on a Page From a Mile Away[https://www.sciencealert.com/this-laser-breakthrough-can-read-text-on-a-page-from-a-mile-away] / Alarming Spy Device Can Read Text in an Open Book From Nearly a Mile Away[https://futurism.com/the-byte/device-read-text-mile-away]
本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。