
南アフリカのゴードンズベイの町に突如出没し、ノシノシと歩いていたのは、体長4mくらい、体重も4トン近い巨大なゾウアザラシだ。
その巨体で道路に入り込んだもんだから、通行人も車も思わずストップ。
通報を受けた動物保護団体が出動し、救出から海への帰還まで9時間に及ぶ大作戦が展開された。
巨大なゾウアザラシが道をふさぐ
南アフリカ共和国西ケープ州に位置するゴードンズベイの住宅街で、2025年5月下旬、車道をのっしのっしと歩く巨大な動物が目撃された。
驚いた住民や通行人たちは、すぐにケープ・オブ・グッドホープ動物保護協会[https://capespca.co.za/wildlife-news/elephant-seals-surprise-visit-to-gordons-bay-streets-ends-safely/](SPCA)に通報。スタッフが確認したところ、そこにいたのは南半球の海に生息するミナミゾウアザラシであることがわかった。
オスのミナミゾウアザラシは、体長が最大で6メートル、体重は5トンに達する世界最大のアザラシとして知られている。
さらにこのゾウアザラシ、車に興味をもったのか、その大きな体で車にもたれかかったりなんかしている。
巨大なゾウアザラシが突然住宅街に現れたことで、現場は一時交通が遮断されるほどの混乱に陥った。
なぜ住宅街に?極めてまれな出来事
ミナミゾウアザラシは、主に亜南極圏(サウスジョージア島、マッコーリー島、ケルゲレン諸島など)に生息する海洋哺乳類で、普段は南大西洋や南インド洋などの外洋を回遊している。夏季は繁殖や脱皮(換毛のように皮膚の一部が少しずつ剥がれ落ちて新たな皮膚に更新される現象)のために陸に上がるが、冬季は長期間を海で過ごすのが特徴だ。
南アフリカの沿岸にもごくまれに若いオス個体が姿を見せることはあるが、住宅街の内部にまで迷い込んだ事例は非常に珍しい。
SPCAは「今回のように内陸部まで迷い込むケースは、関係者の記録上でもほとんど例がない」と述べ、動物がストレスを感じないうちに保護する必要があると判断した。
各機関が連携し、9時間におよぶ大救出作戦
ゾウアザラシの保護と安全な移送には、SPCAのほか、複数の地方自治体、交通管理部門、野生動物専門家が協力し、9時間におよぶ救出作戦が展開された。
まず現場周辺の交通を遮断して安全を確保し、見物人が近づかないよう警備が強化された。
その後、専門家がゾウアザラシを麻酔で鎮静させ、大型の動物搬送用トレーラーに慎重に乗せた。
目的地は、ゴードンズベイから車でおよそ30分の場所にあるケープタウンの郊外に位置する自然海岸、コッゲルベイだ。ここなら静かな環境で安全に海に戻すことができる。
ゾウアザラシの大冒険は終わり、無事海へと帰っていく
コッゲルベイに到着したトレーラーの扉が開けられると、ミナミゾウアザラシは麻酔が切れた状態でのそのそと砂浜に這い出し、そのまま海へと向かっていった。
人々が見守る中、巨体が波間に消えていく姿に、現場は安堵と感動に包まれた。
彼がなぜここまで内陸に入り込んだのかは不明だが、オスの若い個体(子供)が方向を誤り、迷子になった可能性があるという。
ミナミゾウアザラシは、繁殖期には多くの個体が陸に集まり、オスがメスをめぐって競い合い、1頭のオスが複数のメスと交尾する「ハーレム」を形成する。
しかし、それ以外の季節は海で単独生活を送っている。とくに若いオスは自分の縄張りを持たず、広い範囲を回遊することが多いため、今回のように1頭だけで長距離を移動し、沿岸や陸地に迷い込むケースもまれに見られる。
いずれにせよ、無事に海に戻ることができてよかった。道路は危ないから、もう人の住む場所に迷い込まないでね!
References: Elephant Seal’s Surprise Visit to Gordon’s Bay Streets Ends Safely[https://capespca.co.za/wildlife-news/elephant-seals-surprise-visit-to-gordons-bay-streets-ends-safely/]
本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。