
2025年5月、アメリカ・ニューヨーク州のペース大学で行われた卒業式で、学生の名前を読み上げる役割をAI音声が担当した。
事前に発音情報を入力することで誤読を防ぐためだというが、式に参加した多くの学生からは「機械的で冷たい」「自分の名前を呼ばれた感じがしない」といった違和感の声が相次いだ。
ステージ上では学生のスマホのQRコードをスキャンすることで音声が再生される仕組みで、感動の場面がまるでコンビニのレジのようだったという。
ペース大学の新たな試み、AIが名前を読み上げる卒業式
ニューヨーク州の私立大学、ペース大学の卒業式が、これまでにない新しい形で行われた。これまでは人間の担当者が学生の名前を読み上げていたが、今年はそれがAI音声に置き換えられた。
この変更にあたり、大学側は事前に学生たちに対し、名前の発音をAIが正しく読み上げられるよう、専用のウェブサイトにアクセスして発音を入力するよう求めた。
その目的は、外国語由来の名前の発音ミスを避けることだった。
しかし、式に参加した卒業生たちの間では、想像していた感動とは異なる「冷たさ」や「機械的な演出」が印象に残ってしまったという。
QRコードをスキャン、AI音声で名前が再生される仕組み
式当日、卒業生たちはスマートフォンを手に列に並び、ステージに上がると、教員にQRコードを提示。その場でスキャンされると、AIが読み上げる名前がスピーカーから流れた。
この様子は5月23日にInstagram上に投稿された動画で明らかになった。学生たちがレジ待ちのように整然と並び、バーコードを読み取られると、機械のような声で名前が読み上げられる光景が映っている。
以下の動画を音声をオンにして聞いてみると、アナウンスするAIの発音はとても流暢だし、男女複数の声の演出もされている。
SNSには様々な反応
SNSではさまざまな意見が飛び交った。「自分の名前を正確に呼んでもらえるのは嬉しい」という声もあれば、「大学がAIで名前を読み上げるのに、学生がレポートでAIを使ったら退学処分というのは矛盾している」と皮肉るコメントも見られた。
一部のユーザーからは「人間の温かみが失われた」「これはもうただの自動処理だ」といった批判的な声も相次いだ。「コンビニのスーパーみたい、ちょっと機械的すぎない?」という意見もあり、晴れやかな卒業式の本来の意義が失われたのではという指摘が続いた。
教育現場で活用が広がっているAI
なお、こうしたAIを利用した試みは、ペース大学に限られた話ではない。
現在、世界各地の学校や大学では、教育、採点、イベント運営などさまざまな場面でAIが導入されつつある。
効率性や正確さという観点では大きなメリットがあるが、特に卒業式のような人生の節目では、「人間同士の関わり」が持つ感情的な価値が強く求められる。
テクノロジーの進化に伴い、「どこまで機械に任せるか」という線引きが、今後ますます問われていくだろう。
References: College grads shocked as names are read at commencement — by AI: ‘What a beautiful personal touch!’[https://nypost.com/2025/05/23/tech/college-grads-shocked-as-names-are-read-at-commencement-by-ai-what-a-beautiful-personal-touch/] / ‘Felt Like A Robot Called My Name’: Pace University Grads React To AI Ceremony[https://www.news18.com/viral/felt-like-a-robot-called-my-name-pace-university-grads-react-to-ai-ceremony-ws-l-aa-9360075.html]
本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。