13歳少年が地下洞窟で発見した地底湖の秘密
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 アメリカ・テネシー州の静かな丘陵地帯。その地下の洞窟深くに、巨大な地底湖が存在している。

 この地底湖はアメリカで最大、世界でも2番目の規模を誇るといい、「ロスト・シー[https://www.thelostsea.com/](失われた海)」という詩的な名前で呼ばれている。

 今から120年前に洞窟を探検していた13歳の少年が、この地底湖を偶然発見。広く世に知られるきっかけとなったのだ。

洞窟探検の少年によって発見された地底湖

 1905年のある日、テネシー州にあるクレイグヘッド洞窟を探検していた、当時13歳のベン・サンズ少年は、地下約90mの深さまで辿り着き、細い岩のトンネルを発見して、その中に身体を潜り込ませた。

 そしてようやくトンネルを抜けた時、彼の目の前に広がっていたのは、満々と水をたたえた広大な地底湖だった。

 クレイグヘッド洞窟でツアーガイドをしているサバンナ・ダルトンさんは、発見時の様子を次のように説明する。

13歳の少年は、自転車のタイヤほどの大きさのトンネルを約12mにわたって這って進み、湖に落ちました。そして実際に膝までつかるほどの水の中を、彼は歩いて進んだのです。

 懐中電灯の明かりは向こう岸まで届かなかった。だがそこに広がっていたのは、有史以来、初めて人間の目に触れたであろう光景だった。

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 この「発見」に興奮した少年は、泥団子をいくつも作って、暗闇に向かって思い切り投げてみた。

 彼はその時の様子を、「四方八方から水しぶきの音しか聞こえなかったんだよ」と、生涯にわたり嬉しそうに語っていたそうだ。

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ヨーロッパ人の入植以前からささやかれていた噂

 クレイグヘッド洞窟自体は、昔からこの周辺で暮らしていたチェロキー族によって探検され、武器庫や貯蔵庫として利用されていたらしい。

 クレイグヘッドという名前も、後にチェロキー族の酋長の名にちなんでつけれらたものなんだとか。

 さらに19世紀になると、今度は白人の入植者たちがやって来て、やはりジャガイモなど食料の貯蔵に利用していたようだ。

 一年を通じて気温が摂氏15度前後に保たれている洞窟内は、貯蔵庫として理想的な環境だったのだ。

 実はこの洞窟に人間が入るようになってから、地下に湖があると言う噂は囁かれ続けていたという。

 だがその誰もが、ここまで巨大な地底湖が洞窟の奥に眠っているとは、想像だにしていなかった。

 現在、目で見える部分だけに限っても、湖の長さは約240m、幅は約66mあるという。だが最新の探査機器を使った調査やダイバーたちの努力にもかかわらず、ロスト・シーの全容はいまだ解明されていない。

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地底湖にはニジマスが棲んでいる?

 この地底湖には、現在約300匹のニジマスが生息している。もともとここにいたわけではなく、発見後に外部から持ち込まれたものが繁殖しているのだ。

 ニジマスを湖に放つことで、外部に繋がる入り口を見つけてくれることを期待したのだという。

 だが結局ニジマスは外へ逃げ出すことなく、この地底湖で繁殖を重ねている。エサがないため、観光客の乗った船が通りかかると、餌をもらおうとして集まって来るのだそうだ。

彼らはここで長い時間を過ごしているので、視力と体色が少しずつ失われてきています。(洞窟内の)照明はもちろん自然光ではないため、色素を維持するのは難しいのです

 先述のガイドのダルトンさんは、ニジマスたちの生態についてこう説明する。

 視力が失われ、色素が減退するのは、自然界でしばしば見られる「ケイブ・アダプテーション(洞穴への適応)」と呼ばれる現象だ。

 さらに世代を重ねるうちに、この地底湖のニジマスたちは、外の世界の仲間とは全く違った特徴を持つようになるのだろう。

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観光地として大人気の「失われた海」

 現在、この湖の一部は「The Lost Sea Adventure」という名前で一般公開されており、ボートに乗って地下湖を巡るツアーに参加することができる。

 天井には結晶化した石灰華がきらめき、水面は鏡のように静か。LEDライトで照らされた幻想的な世界に、訪れる人々は息を呑む。

 子ども連れの家族やカップル、果ては科学好きのシニアまで、訪問者は年々増えており、地元経済の一翼も担っている。地元の学校では、社会科見学で訪れるコースとしても定番だ。

 ツアーの料金は以下の通りである。団体料金は少し安くなるほか、洞窟内で一泊するエクスカーション・ツアーも開催しているそうだ。

  • 一般:28.95ドル
  • 子供(4~12歳):16.95ドル
  • 幼児(~3歳):無料
  • シニア(62歳以上):27.95ドル

 ツアーの様子は、下の動画で見ることができる。

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 地底湖までは洞窟の入り口から徒歩で約40分の下り坂。帰りはもちろん上り坂になるので、さらに時間がかかる。

もし訪れる際は、歩きやすく滑りにくい靴を履くことが推奨されている。

References: A 13-Year-Old Boy Found A "Lost Sea" Beneath The US. It's So Vast, It Has Never Been Fully Explored[https://www.iflscience.com/a-13-year-old-boy-found-a-lost-sea-beneath-the-us-its-so-vast-it-has-never-been-fully-explored-79179]

本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。

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