
アメリカ・ネブラスカ州スワードにある、通称「世界最大のタイムカプセル」が、2025年7月4日に50年の眠りから目を覚ます。
このタイムカプセルは、地元の元雑貨店主ハロルド・キース・デイビソン氏が、自らの人生や時代の空気を孫たちに伝えるため、1975年に建造したものだ。
45トンの金庫には、当時の車や日用品など約5,000点が詰め込まれており、その上にはさらに巨大なコンクリート製ピラミッドも設置された。
現在はギネス記録としての認定はないものの、地元では今なお「世界最大」として親しまれている。中には何が入っているのか。近づく開封の日を前に、50年前の男の思いが注目を集めている。
「孫たちへ自分の人生を伝えたい」老店主の思いから始まった
1975年、ネブラスカ州スワードの雑貨店主だったハロルド・キース・デイビソン氏は、当時すでに高齢だった。
彼は、自分がどんな時代に、どのような生活を送っていたのかを後世に伝えたいと考えた。そして「自分の孫たちが、自分のことを忘れてしまうのではないか」と危惧し、実際の店舗の前庭に45トンの鉄製タイムカプセルを埋設した。
その中には、自身の生活を象徴する日用品や雑貨、衣類、車などが大量に収められ、総数は5,000点を超える。
娘のトリッシュ・ジョンソンさんは、アメリカの観光情報サイト『Roadside America[https://www.roadsideamerica.com/story/15985]』の取材に対し、「父は1975年の自分の暮らしを、未来の孫たちに直接見せたかったのです」と語っている。
「世界最大」のタイムカプセルの称号をめぐる論争
このネブラスカのタイムカプセルは1977年に「世界最大のタイムカプセル」としてギネス世界記録に認定された。
しかし、これに異議を唱えたのが、ジョージア州アトランタのオグルソープ大学だった。
同大学は1940年5月、地下聖堂を「文明の墓」と呼ばれるタイムカプセルとして密封しており、ネブラスカのタイムカプセルよりも大きいと主張した。
デイビソン氏はそれに対して、「部屋を密封したものは本当のタイムカプセルではない」と反論。
ギネスはこの論争の末、「最大のタイムカプセル」カテゴリー自体を削除するという決定を下した。
だが、デイビソン氏は黙ってはいなかった。カプセルの上に巨大なコンクリート製ピラミッドを設置し、さらに多くの物品を追加封入したのである。
現在では、ギネスの認定はないものの、地域住民の間では変わらず「世界最大のタイムカプセル」として知られている。
ピラミッド部分は2024年に開封
デイビソン氏が最初に埋めたタイムカプセル本体はまだ開けられていないが、その上に後から設置されたコンクリート製ピラミッドの部分は、2024年に一度開封されている[https://www.ketv.com/article/seward-opens-pyramid-that-guards-worlds-largest-time-capsule/61512145]。
開封には6時間のコンクリート破壊作業を要したが、その中からは住民が描いた壁画、地元の人々による手紙、そして年季の入ったトヨタ・カローラが発見された。
尚、2025年に開封予定の本体には、当時の新車だったシボレー・ベガやバイクのほか、ビキニや花柄の男性用水着など、1970年代のファッションや文化を象徴する品々が収められているとのこと。
なお、一部では「売れ残りの商品を詰め込んだのではないか」という噂もあったが、娘のジョンソンさんはこれを明確に否定している。
開封に向けて娘への「遺言」
デイビソン氏は1999年にこの世を去ったが、生前に娘へ一つの重要な遺言というか助言を残していた。
「ピラミッドの中からでは、本体の蓋を開けるスペースが足りないかもしれない。周囲をさらに壊さなければならない」と娘に伝えていた。
その言葉通り、2025年7月4日の開封作業では、再び建造物を一部壊すことになる見込みだ。
50年の時を経て、地中の金庫が開かれるとき、そこには1975年という時代が丸ごと保存されているはずだ。
興味がある人はネブラスカへGOだ。
References: World's Largest Time Capsule[https://www.roadsideamerica.com/story/15985]
本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。