
2025年6月初旬、NASAの太陽観測衛星がとらえた映像には、太陽に人の顔のような模様がくっきりと浮かび上がった。
紫外線波長で撮影された太陽は、南半球に大きく開いた「口」、北半球に「目」のような黒い領域が2つ並び、まるで何かを訴えかけるかのような表情を見せている。
この現象は、太陽の外層「コロナ」に巨大な穴が生じたように見えることから「コロナホール」と呼ばれている。
しかも口にあたる部分は、木星5個分にも相当する幅があるという。なんという大きな口!
太陽の顔、何を語ろうとしている?
NASAの太陽観測衛星、ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC](SDO)から送られた映像には、太陽の表面に何かを語ろうとするかのような顔のような模様が映っていた。
この奇妙な模様の正体は、太陽の表面で発生した「コロナホール」と呼ばれる現象によるものだ。
コロナホールとは、太陽の最も外側にある大気「コロナ」の一部に、温度が低く密度の薄い領域が突然現れる現象のことをいう。
コロナは数百万度の高温のガス(プラズマ)で構成されているが、太陽の磁場の構造が変化すると、その一部が外側へ大きく開くことがある。この開いた領域からは、内部の粒子が一気に宇宙空間へと吹き出していく。
紫外線で観測すると、この領域は暗く、ぽっかりと空いた「穴」のように見えるため「コロナホール」と呼ばれている。
今回の太陽では、この黒いホールが“目”や“口”のように配置され、パレイドリア現象により、人の顔のように見えるのだ。
木星5個分の「口」から吹き出す太陽風
このようなコロナホールは決して珍しいものではなく、太陽活動のサイクルの中で定期的に発生する。
特に太陽活動が活発になる「太陽極大期」の前後では、こうした現象が多く観測される。
コロナホールから放出された太陽風は、地球の磁場に衝突することで太陽嵐(磁気嵐)を引き起こす。
この太陽嵐によって、美しいオーロラが現れることもあれば、通信衛星やGPSに障害を与えることもある。
特筆すべきは、口の部分にあたるコロナホールの大きさである。
これは太陽系最大の惑星である木星(直径約14万km)を5つ横に並べたほどのサイズに相当する。これほど巨大な構造が太陽に現れるのは決して毎回ではない。
今回の太陽風の影響は限定的
今回のコロナホールからの太陽風もすでに地球に向けて到達しつつあり、宇宙天気予報機関によると軽度から中程度の太陽嵐が発生している。
ただし、今のところ大きな技術的トラブルは報告されていない。
ただし、今回のコロナホールは太陽の南側にあるため、地球との位置関係から見て影響は小さいと予想されている。
英国気象庁は、「太陽風の風速は上昇する可能性があるが、地球との相互作用は弱く、軽度な影響にとどまる見込み」と発表している。
通信障害や大規模なオーロラの発生といった深刻な影響は、今回は起こらないと見られている。
太陽の動きが活発化している兆候
現在の太陽は、11年ごとに繰り返される「太陽活動周期」の中で、最も活発な時期に差しかかっている。黒点の数が増え、太陽フレアやコロナ質量放出(CME)といった激しい現象も頻繁に発生している。
実際、2025年5月にはG4クラスの大規模な地磁気嵐が観測され、ふだんはオーロラが見られない地域でも光のカーテンが広がった。今回の“太陽の顔”も、こうした活動の一環と考えられる。
パレイドリアとはわかっていても太陽が我々に何らかのメッセージを伝えているかのように見えるので、何かの警告として受け取っておくことにしよう、そうしよう。
References: A Giant Mouth Has Opened on The Sun And Even It Looks Surprised[https://www.sciencealert.com/a-giant-mouth-has-opened-on-the-sun-and-even-it-looks-surprised] / Giant Crude "Face" Appears on Surface of Sun[https://futurism.com/sun-face-coronal-hole]
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。