良く噛まなくてもOK!草食の首長恐竜は丸のみしていたことが腸内化石で明らかに
ディアマンティナサウルスの群れ Photo by:iStock

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 人間の場合、小さい子供でも「良く噛んで食べなさい」と言われるものだが、恐竜に関していえば、その必要はなかったようだ。

 オーストラリアで発掘された白亜紀中期の竜脚類の化石から、腸の内容物(コロライト)が発見され、木の芽や種のサヤなどを、ほとんど噛まずに丸のみしていたことが明らかとなった。

 竜脚類とは、長い首と尾、小さな頭、そして巨大な体を持つ草食恐竜の一群で首長竜とも呼ばれている。

 では、そんな食べ方でどうやって消化していたのか? 実は、すべてお腹の中の腸内細菌の働きに頼っていたのだ。

世界初、竜脚類の腸の内容物が保存された化石が見つかる

 恐竜がどのような生物で、当時の生態系でどのような役割を果たしていたのか? こうした疑問を解くうえで大切なのは、彼らが何をどうやって食べていたのか知ることだ。

 2017年、オーストラリア北東部のクイーンズランド州にあるウィントン層で、オーストラリア恐竜時代博物の研究チームとボランティアが、白亜紀中期に生息していた竜脚類の化石を発掘した。

 この個体は「ディアマンティナサウルス・マティルデイ(Diamantinasaurus matildae)」という種に属し、体の大部分が比較的良好な状態で保存されていた。

 発掘の過程で、恐竜の腹部付近にあたる岩層から、植物の痕跡が多く含まれた不自然なひび割れをもつ岩石が見つかった。

 詳細な分析により、これが恐竜の腸の中にあった内容物「コロライト」であることが判明した。

 これは、竜脚類としては世界で初めて確認された腸内容物の化石である。

 これまで竜脚類の食性は、歯の摩耗や顎の構造、首の長さといった解剖学的特徴から推測されてきたが、直接的な証拠はなかった。

 だが今回の発見により、推測に基づく仮説が初めて実際の証拠によって裏付けられたのだ。

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噛まずに丸のみ、腸の中で発酵して消化する

 研究チームがそこに含まれていた植物を分析してみると、噛みちぎった痕跡はあったが、咀嚼した形跡は見当たらなかった。

 どうも彼らは、食べたものをほとんど噛むことなく、そのまま飲み込んでのだ。

 とは言え、そのまま消化・吸収していたわけではない。お腹の中の細菌を利用し、腸内で発酵させ消化していたのである。

 またコロライトには、球果植物(針葉樹類)・シダ種子類・被子植物の葉など、さまざまな植物が含まれていた。

 このことは、ディアマンティナサウルスがなんでもムシャムシャと大量に食べて生きていただろうことを告げている。

 オーストラリア、カーティン大学のスティーブン・ポロパット氏は、「これは、少なくとも一部の竜脚類が選り好みせず、手の届く範囲にあり、安全に消化できる植物ならば手当たり次第に食べていたことを意味します」と述べている。

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被子植物への適応と、恐竜の進化的柔軟性

 この事実は、竜脚類の体の構造から推測されてきた仮説とおおむね一致している。そのため、丸のみ自体にそれほど驚きはなかった。

 だが意外な事実も判明している。それはディアマンティナサウルスが被子植物(花を咲かせる植物)を食べていたことだ。

 オーストラリアでもっとも古い被子植物の化石は、このディアマンティナサウルスの時代より4000万年前のことだ。

 つまり竜脚類は、この期間のうちに花を咲かせる植物に適応したということだ。

 また今回の発見から、ディアマンティナサウルスは少なくとも大人になる前、地面に生える植物と高所の植物どちらも食べていたことも明らかになっている。

 卵から孵化したばかりの赤ちゃんは、地面近くの背の低い植物にしか食べられないが、成長して体が大きくなるにつれて食べられる植物の範囲も広がる。

 コロライトには若い芽・包葉・種子のさやが多く含まれていたことから、成長途上のディアマンティナサウルスは、植物の消化しやすい部分を好んで食べていたことがうかがえる。

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他の個体が全て同じだったかどうかはわからない

 ただし、こうした発見には注意点もある。

それは、それらがたった1体の恐竜のコロライトから推測された話であることだ。

今回のコロライトは、たった1体の成長途中の竜脚類の最後の食事か、せいぜい数回分の食事を示しているに過ぎません(ポロパット氏)

 つまり、そこに含まれていた植物が、普段通りの食事なのか、死の直前の異常な状況における食事なのかわからない。

 さら大人になってもまた同じような食事を続けたのか、あるいは季節による違いがあるのかといった点もわからない。

 竜脚類の食事の真実を知るためには、さらなる食べ物の化石が必要になるということだ。

References: Fossilized gut contents elucidate the feeding habits of sauropod dinosaurs[https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(25)00550-0] / Fossilized dinosaur gut shows that sauropods barely chewed[https://www.eurekalert.org/news-releases/1085696]

本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。

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