新種だった!首長恐竜の頭蓋骨の化石がほぼ完全な形で発見される
保存状態の良い新種の首長恐竜(幼体)の頭蓋骨の化石Scientific Reports (2025)

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 中国北西部の甘粛省で、約1億6500万年前の地層から首長恐竜「竜脚類」の化石が発見された。

 保存状態の極めて良いほぼ完全な「頭蓋骨」を分析した結果、この恐竜がこれまで知られていなかった新種であることを明らかにした。

 この恐竜は、真竜脚類から新竜脚類へと進化していく中間段階に属すると考えられており、東アジアにおけるジュラ紀中期の恐竜の多様性や系統進化に新たな手がかりを残してくれている。

この研究は『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-025-03210-5]』(2025年5月23日付)に掲載された。

ジュラ紀中期の新種の恐竜「ジンチュアンロン・ニエドゥ」

 発見された化石は、中国・甘粛省金川区に分布する「新河層」と呼ばれる地層から見つかった。

 この層はジュラ紀中期のバトニアン期後半(約1億6500万~1億6800万年前)にあたる堆積物で構成されており、当時の陸上生物の記録が残されている。

 化石は、約31cmの頭蓋骨と下顎、首の骨(頸椎)5個、尾の骨(尾椎)29個が連結した状態で保存されていた。

 特に注目されたのは、頭蓋骨がほぼ完全な形で残っていたことだ。

 この恐竜は「Jinchuanloong niedu(ジンチュアンロン・ニエドゥ)」と命名された。

 ちなみに学名は「ニッケルの都、金川の龍」という意味で、金川区がニッケルで有名なことに由来する。

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進化の空白を埋める発見

 ジンチュアンロン・ニエドゥは、真竜脚類に属することが明らかとなった。

 真竜脚類[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E7%AB%9C%E8%84%9A%E9%A1%9E]は、竜脚類の中でも最も初期の原始的な種を除いた、大型の植物食恐竜を含むグループだ。首と尾が長く、四足歩行を基本とする体形が特徴で、ジュラ紀中期には多様な種が現れ、生態系の中で広く分布していた。

 この真竜脚類の中から、さらに進化したグループとして「新竜脚類[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E7%AB%9C%E8%84%9A%E9%A1%9E]」が誕生する。

 アパトサウルス[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%91%E3%83%88%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9]やブラキオサウルス[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%AD%E3%82%AA%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9]といった有名な巨大竜脚類はすべて新竜脚類に含まれる。

 ただし、新竜脚類に進化する前の段階にあたる真竜脚類も、ジュラ紀中期には依然として多くの種が繁栄していた。

 真竜脚類は、ジュラ紀前期の大量絶滅イベントを経て生き残り、以降の竜脚類の多様化を担った主要な系統なのだ。

 とはいえ、その頭骨は壊れやすく、完全な形で保存された化石はほとんど見つかっていない。そのため、当時の頭部の構造や咀嚼のしくみなどには、大きな情報の空白が残されている。

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真竜脚類から新竜脚類へと進化していく中間段階にあった

 今回記載された「ジンチュアンロン・ニエドゥ」は、中期ジュラ紀の地層から発見された、きわめて貴重な真竜脚類の一種である。

 この恐竜は、新竜脚類には属さない、より原始的な段階の真竜脚類に位置づけられる。

 中国地質大学を中心とする研究チームは、頭蓋骨と体幹骨の詳細な形態比較を行い、トゥリアサウルス類と新竜脚類の近縁である、新竜脚類に進化する前の段階にあたる真竜脚類であることがわかった。

 これにより、本種は非新竜脚類の真竜脚類の中でも、進化的に重要な位置を占める種として記録されることとなった。

ジンチュアンロングの解剖学的特徴には以下のようなものがある:

  • 上顎骨の上行突起基部に小さな孔がある
  • 前頭骨の前上面に開口部がある
  • 縦横比が明瞭な頑丈な後眼窩骨
  • スプーン状の上顎歯(シュノサウルスやトゥリアサウルスに類似)

 さらに、尾椎の後方では神経弓(アーチ状の骨)が未癒合で、頭蓋骨上部には大きな松果体孔も確認された。これらの特徴から、この個体はまだ成長途上の若い恐竜だったと考えられる。

 体長はおよそ10mと推定されているが、成体になればさらに大きくなっていた可能性がある。

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中国北西部における竜脚類の進化史を紐解くヒント

 研究チームによると、ジンチュアンロンは、中期ジュラ紀における竜脚類の多様化と生態的分化を考察するうえで重要な手がかりであるとのこと。

 「ジンチュアンロンの発見により、初期の竜脚類がさらに増え、中国北西部における竜脚類の進化史を紐解く新たな手がかりが得られた」と研究チームは述べている。

References: A new eusauropod (Dinosauria, Sauropodomorpha) from the Middle Jurassic of Gansu, China[https://www.nature.com/articles/s41598-025-03210-5] / Nearly complete dinosaur skull reveals a new sauropod species from East Asia[https://phys.org/news/2025-06-dinosaur-skull-reveals-sauropod-species.html]

本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。

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