
英国の諜報機関MI6(秘密情報部)に、創設116年目にして初の女性長官が誕生する。
技術革新責任者のブレイズ・メトレウェリ氏が今秋、現長官リチャード・ムーア卿からその職を引き継ぐ予定だ。
映画『007』シリーズで「M」と呼ばれる女性長官は1995年に登場しており、現地メディアでは、ようやく現実が映画に追いついたと報じられている。
MI6創設以来初となる女性長官が誕生
2025年6月16日、キア・スターマー首相は、MI6(秘密情報部)の新たな長官にブレイズ・メトレウェリ氏を任命すると発表した。
MI6は英国の対外情報活動を担う機関であり、1909年の設立以来、116年目にして初めて女性がトップに就任することとなる。
現在47歳のメトレウェリ氏は、MI6内で「Q」と呼ばれる技術革新部門の責任者を務めており、サイバーセキュリティや最新技術の導入において中心的な役割を果たしてきた。
今秋、現長官のリチャード・ムーア卿の任期終了後に18代目の長官となる。
スターマー首相は声明で「英国はサイバースパイや侵略者のスパイ船など、これまでにない脅威に直面している。今回の歴史的な任命は、情報機関の役割がこれまで以上に重要であることを示している」と述べた。
中東と欧州での現場経験、技術革新のリーダー
情報機関で長年のキャリアを持つメトレウェリ氏は、国内情報機関MI5でも幹部として活躍した経験を持つ。特に中東地域の専門家として知られ、同地域や欧州での現場活動を重ねてきた。
メトレウェリ氏は「この任務を託されたことを誇りに思う。MI6はMI5や政府通信本部(GCHQ)とともに、英国民の安全を守り、国益を推進する重要な役割を担っている。今後も同僚や国際的なパートナーとともにその使命を果たしていきたい」とコメントしている。
約3,600人が所属するMI6では、長官である「C」のみが実名で公表される。その他の職員の身元は厳重に秘匿されている。
退任予定のムーア卿もSNS「X」で「メトレウェリ氏は中東情勢が緊迫する中、最適なリーダーだ。技術を活用した革新的な発想力も素晴らしい」と称賛している。
MI5とMI6の違いとは?
MI6(秘密情報部)は主に国外を対象にした諜報活動を担当している。
外国政府、テロ組織、スパイ活動などに関する情報収集と分析を行い、英国政府に報告するのが主な役割である。
海外のネットワークや諜報員との協力を通じて、英国の国益を守る任務を果たしている。
一方、MI5(保安局)は国内の安全保障を担当している。
テロの未然防止、スパイ活動の摘発、国家の安全を脅かす行為への対策など、主に英国本土内での活動が中心だ。
両機関は政府通信本部(GCHQ)とも連携しつつ、異なる役割を持ちながら英国の安全保障を支えている。
アメリカに例えるなら、MI6はCIA(中央情報局)に、MI5はFBI(連邦捜査局)に近い役割を担っている。
スパイ映画「007」に現実が追いついた
これまでMI6のトップは全員男性だったが、国内情報機関MI5ではこれまでに2人の女性長官が誕生しており、電子監視を担当するGCHQ(政府通信本部)でも現在アン・キースト=バトラー氏が女性長官として務めている。
また、映画『007』シリーズでは1995年公開の『ゴールデンアイ』で、ジュディ・デンチ氏が初めて女性長官「M」役として登場した。
ピアース・ブロスナン版ボンド作品以降、ジュディ・デンチが演じる「M」は長年にわたってシリーズに出演し、現地メディアでは「ようやく映画に追いついた」とMI6の今回の動きを報じている。
References: First ever female MI6 chief appointed[https://www.gov.uk/government/news/first-ever-female-mi6-chief-appointed]
本記事は、海外の記事を参考にし、日本の読者向けに独自の考察を加えて再構成しています。