うれしいニュース。絶滅寸前のアオメヒメバトの人工孵化に成功
アオメヒメバト Photo by:iStock

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 2025年4月、ブラジルの固有種で、絶滅の危機に瀕している「アオメヒメバト」のヒナ3羽が無事に孵化した。

 アオメヒメバトの成鳥は現在、野生では11羽しか確認されていないという。

 これは、ブラジル、イギリス、アメリカなどの保全チームによる国際的な協力によって実現したもので、この希少な鳥類にとって今回の孵化は存続に向けた重要な一歩となった。

75年前に絶滅したと考えられていたアオメヒメバト

 アオメヒメバト(学名:Columbina cyanopis)はブラジル、セラード地方に広がるサバンナ地帯に生息する小型のハトである。

 体長は約15.5cmほど。赤みがかった羽毛に青い斑点があり、名前の通り「青い目」が特徴的な鳥だ。

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 アオメヒメバトは1941年に最後に確認されて以来、目撃された記録がなかったため、長らく既に絶滅したと考えられていた。

 それが2015年6月、ブラジル、ミナスジェライス州で調査活動を行っていた鳥類学者によって、およそ75年ぶりに「再発見」され、学界で大きな話題となった。

 とはいえ、アオメヒメバトが絶滅の危機にある事実は変わらない。

 2019年の時点では、野生での生息数は成鳥でわずか11羽と推定されており、絶滅危惧種の中でも特に希少な存在なのだ。

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国際的な協力のもと、3年連続でヒナの人工孵化に成功

 絶滅寸前のアオメヒメバトを救おうと、各国の動物園や生物学者、動物保護団体が協力して国際的なプロジェクトを立ち上げた。

 このプロジェクトはブラジルのイグアスにある鳥類保護区「Parque das Aves」[https://www.parquedasaves.com.br/en/]や、動物保護団体のSAVE Brasil[https://www.savebrasil.org.br/]が主導して発足したものだ。

 さらにイギリスのチェスター動物園[https://www.chesterzoo.org/]やアメリカ、オハイオ州のトレド動物園[https://www.toledozoo.org/]など、これまでに絶滅危惧種の繁殖を手がけてきた施設・団体が、それぞれの持つノウハウや専門知識を提供し、一丸となってアオメヒメバトの繁殖に取り組んだ。

 その結果、2023年に2羽、2024年には1羽、そして今年は3羽の孵化に成功したのだ。

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それぞれの機関が得意分野で協力

 チェスター動物園の鳥類責任者、アンドリュー・オーウェン氏はこう語る。

チェスター動物園にとって、アオメヒメバトの保護活動に参加できることは非常に光栄です。

この希少な種は絶滅の危機に瀕しており、我々の鳥類担当スタッフを含むすべての自然保護活動家の献身と情熱がなければ、この鳥は永遠に失われてしまうかもしれません。



今年は3羽のアオメヒメバトの人工飼育に成功しました。2023年と2024年の成功を基盤に、保険個体群を倍増させる成果となりました

 ここで言う「保険個体群」とは、動物園や保護施設などその種のもともとの生息域外で、人間の管理下で維持される予備的な個体群のことだ。

 その種が絶滅に瀕したとき、将来的に野生に復帰させる「種の命の保険」として機能することが期待される。

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 また、トレド動物園からはハト類の専門家グループ共同議長として、ジョー・ウッド氏が技術的支援を提供。

 ウッド氏はオーストラリアで、小型のハトの人工孵化技術を確立し、その経験が今回の繁殖プロジェクトでも活かされることとなった。

 同動物園の鳥類部門エリアマネージャーのステイシー・ベッカー氏は、この協力体制について次のように語っている。

私たちのチームはヒメアオバトの育雛プロトコルを成功裏に開発し、それが現在アオメヒメバトに使用されている技術の基礎となりました。

トレドでの私たちの取り組みが、この深刻な絶滅の危機にある種の保全に直接役立っているのを見るのは、本当にやりがいを感じます。

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 今回孵化したヒナたちは、できるだけ野生の個体への影響を与えないようにと、アオメヒメバトの繁殖期の早い時期に、野生の巣から採取された卵から産まれたものだ。

 プロジェクトの最終的な目標は、野生への影響を最小限に抑えながら、人工孵化によって彼らの生存率を最大化することにある。

 ウッド氏はこのように説明する。

これは科学に基づく保全の最良の形です。

現場での知見、遺伝学、動物の飼育技術、そして国際協力を組み合わせ、この種に未来を与えることが目的なのです

絶滅の危機を脱するまでの道のりはまだ長い

 この3羽の雛の誕生により、Parque das Aves[https://www.parquedasaves.com.br/en/]では現在、合計で6羽のアオメヒメバトが飼育されることとなった。

 すべての個体は慎重に管理されており、包括的な繁殖管理計画のもとで保護されているのだ。

 そして将来、彼らが成鳥となり繁殖が行われる際には、サンパウロ大学の遺伝学・分子進化研究所の遺伝子解析データを参考に、ペアリングが行われるという。

 Parque das Avesの技術ディレクター、パロマ・ボッソ氏は、今回のヒナたちの誕生に際し、次のような喜びのコメントをしている。

このヒナたちを見るのは本当に興奮します。ヒナが孵化するたびに、この種の運命を覆す真のチャンスが生まれるのです。これは喜びであり、同時に大きな責任でもあります

 6羽のヒナが誕生したとは言え、アオメヒメバトは依然として、絶滅の危機に瀕していることに変わりはない。保全責任者のベン・ファラン氏も、こう付け加える。

アオメヒメバトの鳴き声が、今後もセラードで長く響き続けるには、多くの人々や帰還の努力が欠かせません

 なお、このプロジェクトには、他にも世界中の団体が技術・資金の両面からサポートを提供しており、日本からも経団連自然保護基金、バードライフ・インターナショナル東京が支援を行っているそうだ。

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References: UK Zoo Helps Hatch Three of World’s Rarest Birds–Blue-Eyed Doves–with Only 11 Left in Wild[https://www.goodnewsnetwork.org/uk-zoo-helps-hatch-three-of-worlds-rarest-birds-blue-eyed-doves-with-only-11-left-in-wild/] / Toledo Zoo’s Expertise Helps Hatch Chicks of One of the World’s Rarest Birds[https://www.wtnh.com/business/press-releases/ein-presswire/823096081/toledo-zoos-expertise-helps-hatch-chicks-of-one-of-the-worlds-rarest-birds/]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。

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