人は首を切り落とされてからどのくらい意識を保てるのか?

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 1793年、フランス革命の指導者ジャン=ポール・マラーを暗殺したシャルロット・コルデーが断頭台で処刑されたとき、死刑執行人の弟子がその首を掲げ、頬に平手打ちをした。それを見た者の証言によれば、コルデーの顔は怒りで紅潮したという。


 またイングランド王ヘンリー8世の2番目の王妃であるアン・ブーリンは、斬首された直後、何かを話そうとしたという逸話も伝わっている。

 このように、人が首を切断された後に意識が残っていたらしき様子を伝える話はいくつかあるが、実際のところ、そのようなことはあるのだろうか?

 近年、世界初となる人間の頭部移植の可能性について大きな関心が集まっている。仮にこれが実施されたとすれば、この疑問に対する決定的な答えが出ることだろう。

 だが、今は脳の機能や死後の活動に関する研究から推測するより他にない。人は首を切り落とされてからどのくらい意識を保てるのだろう?
【脳が機能するためには酸素が不可欠】

 脳とそれがもたらす構造はすべて、酸素がなければ機能しない。脳が使用する酸素は、全体の2割と人体の中でかなりの割合を占めているのだから、それがどれだけ酸素を消費しているのか想像できるというものだ。

 首をとおる血管が切断されてしまえば、酸素の供給はただちに停止する。切断後、血液や組織の中に酸素が残っていたとしても、そう長く持ちはしまい。
 
 動かせる部分は、眼球や口など、首に神経と筋肉が残されている部分だけだろう。

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【死後の意識に関する最近の研究】

 より最近では、この分野の研究は、死や臨死体験の最中に人間が保つ意識についても向けられている。

 心停止に陥った人たちが、蘇生処置を受けている間に現場で起きていた出来事を語り、周囲の人を驚かせることがある。

 このことは、心臓が止まってしまい、医学的には完全に無意識と診断される状態であっても、脳が周囲の出来事をきちんと認識していることを示している。


 また別の研究では、心停止後30分間にわたり脳の活動を記録することに成功した。このときのデルタ波は、睡眠中やリラックスしているときにも見られる脳波である。

 直近では、心臓が止まったあとも脳には活動があり、それは心停止から数分後に脳全体に広がる最後の脳波「拡延性脱分極(spreading depolarisation)」で終わりを迎えることが示された。

 また脳以外の器官に関する研究では、死後48~96時間が経過したのちも、遺伝子の発現と活動は続いており、場合によっては増加することすら判明している。

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【首なし鶏マイクの奇跡】

 たとえば、人間以外の動物についてなら、こんな話が報じられている。

 中国のある料理人が毒蛇の頭を切り落としたところ、それは20分も生き続け、結局噛まれて死んでしまったというのだ(こちらのサイトで映像を見ることができる)

 だが、首を切断されてから生きていた事例として一番有名なものは、「首なし鶏マイク」のものだろう。

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 1945年、米コロラド州の農家で飼われていた鶏が夕食で食べるために首を切り落とされた。ところが、その鶏は絶命することなくそのまま歩き続けたのである。

 仰天した農家はもはや食べる気にはならず、切断した穴から餌と水を与え続けた。その結果、それから18ヶ月も生存したのだ。

・頭がなくても18か月間生存していた奇跡のニワトリ「首なし鶏マイク」(閲覧注意) : カラパイア

 どうも、脳幹が切断されるときの角度が絶妙で、生存の基本機能を司る中央神経系の一部が胴体に温存されたらしい。しかも、おあつらえ向きなことに血栓ができて失血死も免れた。


【では人間はどうなのか?】

 残念ながら、人間ではこうはいかない。脳のもっとも原始的な機能を制御する部分でさえ、頭蓋骨の中に収まっているからだ。

 胴体から切り離されたアン・ブーリンが話をしようとしたという逸話は、おそらくはただの作り話だろうと思われるのだ。

References:Did Anne Boleyn really try to speak after being beheaded?/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:人は首を切り落とされてからどのくらい意識を保てるのか? http://karapaia.com/archives/52273793.html
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