
信仰というものは、それが根差している場所の文化の傾向や色合いを映し出すものだ。7世紀、仏教が伝来したチベットでも確かにそうだった。
もともとここにあった土着のボン教によって、この地で仏教は徐々に形を変えていった。こうした融合から生まれた多くの創造的な活動の中でも、チベットの仏教音楽は非常に重要なものとして認識されている。
【チベット仏教音楽の特徴】
西洋の宗教音楽と同様、チベット音楽にも、複雑な記譜体系と、宗教歌が書かれた長い歴史がある。
チベット仏教体験の不可欠な要素は、記譜法が神聖な音や世代を超えた儀式の転移を可能にしたということだ。神聖な歌詞を覚え、献身を表わし、邪悪な霊を追い払い、神に祈るための手段なのだ。
これらの特徴のいくつかは、意識の高さや静かな瞑想に焦点を当てた西方の世俗的な仏教徒にとっては、異質かもしれないが、程度の差こそあれ、チベットの学校では超人間領域の美的体験にかなりの価値をおいている。
タルサ大学の音楽学者ジョン・パウエルは、「チベット仏教における神聖な音の使い方、マントラヤナの伝統は、人間の意識を変えるための定型句として作用する」と書いている。
details of impressive Tibetan musical notation pic.twitter.com/4y0aWkrLSI
— Jo De Baerdemaeker (@typojo) 2018年10月22日
【チベット仏教音楽の記譜法(楽譜)と歌唱法】
チベットの記譜法は、メロディ、リズムパターン、楽器のアレンジを象徴的に表している。歌、視覚化、手ぶりなどが合わさって、チベット音楽は、儀式のパフォーマンスを決定的に導いていく。
儀式の舞いが加わるだけでなく、山岳地域の環境に合ったスイスホルンのような長い楽器などを含む多くの儀式用楽器や、多重倍音効果の出るユニークな歌唱法といった特徴がある。
以下の楽譜は19世紀の中国思想の陽の写本からのもの。チベット音楽にもっとも深い関わりがあり、高く評価されている歌の伝統で、Yang-Yigという表記システムに頼る唯一のものだそうだ。
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【その曲調は?】
曲線は、イントネーションのスムーズな上がり下がりを表わしている。記譜にはまた、どのような精神で音楽が歌われるべきかについて、細かく指示されている。例えば、川のように流れるようにとか、鳥の歌のように明るく、といった具合だ。
そして、母音の発声にほんのわずかな改良が加えられる。Yang-Yigは、チベット仏教以前の6世紀にさかのぼるものだが、リズムのパターンも、音符の長さも記録が残っていない。ほかの種類の音楽には、声、ドラム、トランペット、ホルン、シンバルのための、独自の表記法がある。
それではチベット仏教音楽を聴いてみよう。
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Traditional Tibetan Music instrument played by students of Jonangpa Monastery, Kathmandu, Nepal
こちらは仏僧たちによる歌だ。
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Tibetan monks throat-singing - Specialized form of chanting
それらはインドからの宗教的な教えを引き継いでいるものの、チベットの音楽の伝統はまったくの独自のものだ。
「チベット仏教の歌を理解するには、メロディやリズムの概念全体を考え直すのが肝要だ」とパウエルはチベット音楽のボーカルと楽器の質の詳細な概要の中で書いている。
チベット文化以外の多くは、メロディを音の高さの上昇や下降の連続であると考えている。チベットのタントラの歌では、メロディアスな内容は、母音改良と丁寧にトーンの輪郭をたどることで発生するという。
References:Tibetan Musical Notation Is Beautiful | Open Culture/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:独自の伝統を持つチベットの仏教音楽の歴史とその美しい楽譜 http://karapaia.com/archives/52274128.html
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