
栄養に乏しい岩だらけで、根をはるのも難しそうなところでもたくましく生きる植物がいる。
ブラジルの山岳地帯は岩がちで、普通の植物ではそうやすやすと根っこを張り巡らせることができそうもない。
ならば、とばかりに植物が身につけたのはふっさふさの産毛と酸。これで岩石を溶かして、細い隙間に入り込んでは、栄養素のリンを吸収しているのだ。
【栄養に乏しい山岳地帯に5000種の植物】
植物生態学者のパトリシア・デ・ブリット・コスタ氏(ブラジル、カンピーナス州立大学)はこう話す。
栄養の乏しい環境の生物多様性は乏しいというイメージがありますが、実際には植物は栄養を確保する多様な戦略を身につけており、種も多様です
『Functional Ecology』に掲載された研究が調査したのは、ポルトガル語で「岩だらけの草原」という意味のコンポス・ルペストレスという地域。
ここは土壌が薄く、植物が利用できる栄養がほとんど検出不可能なレベルしかない、草木には一見過酷な環境だ。
しかも、ついでに言うなら、ブラジルの国土の1パーセント未満でしかない限られた地域でもある。
それなのに、なんと同国の維管束植物の15パーセントに相当する5000種という多様な植物種が発見されてしまった。
【酸で岩を溶かすベロジアの仲間】
注目されたのは、まったく土壌がない珪岩の岩場に自生するバルバセニア・トメントサ(Barbacenia tomentosa)とバルバセニア・マクランサ(B. macrantha)というベロジア科の2種だ。
ノミとハンマーで丁寧にその植物を採取して明らかになったのは、その根っこが岩の中に10センチも入り込んでいるということだった。
その秘密を探るために電子顕微鏡と化学解析で調べたところ、根っこの先端が細かい毛でびっしりと覆われており、リンゴ酸とクエン酸を分泌していることがわかった。
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これによって岩を溶かすと、岩からリン酸塩が遊離する。こうして岩に含まれる栄養素のリンを吸収しているようなのだ。
根っこは岩を溶かしているのであって、亀裂に沿って伸びているわけではない。こうした岩石を溶かす根を持つ植物は、これまでこの2種でしか確認されていないそうだ。
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【栄養に乏しい地域で生きる植物の生存戦略】
なお世界各地のリンに乏しい地域に生える植物は、プロテオイド根(小根が密に生えた試験管ブラシのような根)かダウシフォーム根(毛根が密でニンジンのような形状の根)を進化させてきた。
これらもやはり酸を分泌して、痩せた土や砂からリンを吸収するのだが、岩石でそうしているわけではない。
ブラジルの珪石は特にリンに乏しく、平均すると岩石1グラムあたりで、リン0.14ミリグラムしか含まれていない。
世界中にある69種のかんらん石を調べた調査では、一番リンに乏しいケースで0.12ミリグラムだった。
つまり発見された2種の植物は、世界でも底辺クラスの栄養に乏しい環境で、ユニークな生存戦略を身につけて生き抜いているたくましいやつなのだ。
追記(2019/06/01):本文を一部修正して再送します。
References:Some plants use hairy roots and acid to access nutrients in rock | Science News/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:ふっさふさの根と酸で岩を溶かして栄養にありつく珍しい植物が発見される(ブラジル) http://karapaia.com/archives/52274904.html
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