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ぬらっと湿ったボディに貝殻を乗せたその姿が魅惑だったりもするカタツムリだが、そのネバネバした粘液から着想を得て、新たなる超強力接着剤が開発されたという。
その強度は、成人男性の平均体重にすら耐えられるそうで、切手2枚分の面積に塗ってペタッと貼れば、体重87キロの人間が乗ってもはがれずに持ちこたえるほどだ。
しかもこの接着剤、ただ強力なだけではない。簡単にはがすこともできるのだ。
【貼ってはがせて強力な接着剤を捜しもとめて...】
もちろん、これまでにも貼ってはがせる接着剤はあった。しかし、そうしたものは基本的な接着力が弱かった。反対に強力な接着力を求めるならば、そう簡単にははがせない。これが接着剤の常識だったのだ。
アメリカ・ペンシルバニア大学の材料科学者ヤン・シュウ氏が、強力な接着力がありながらも簡単にはがせるという、ある意味矛盾した接着剤を作れないものだろうかと頭をひねっていた。
そしてはたと気がついたのがカタツムリだったのだ。
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【カタツムリの粘液に着目】
カタツムリは乾燥から身を守るために、「エピフラム」という粘液を利用する。
エピフラムは動き回るときにネバっとしているが、乾燥すればがっちりと固形化する性質がある。これによって殻の開口部にセロファンのような蓋をすることで、カタツムリは水分の喪失を防ぐのだ。
しかもおあつらえなことに、そこには微細な穴が空いているために、殻の中に閉じこもっても窒息せずに済む。
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【ヒドロゲルを利用した超強力接着剤】
これをヒントに開発された接着剤は、大量の水分を含むポリマーのネットワークのような構造をしたヒドロゲルから作られた。
ヒドロゲルは水分を含んだ状態では、接着面にあるごく小さな隙間や凹凸にも染み込むことができる。ところが乾燥して固形化しまえば、がっちりとその状態を維持し、強力な接着力を発揮する。
だが、今度はそこに再度水分を補給して柔らかくしてあげると、ゆっくりとはがれるのだ。
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【チョウのハネを使って実験。すごい!無傷のまま】
それを証明するための実験もすごい。チョウの翅(ハネ)を接着したのだ。予想される大惨事にやめてーっ!と叫びたくなるが、水分を加えてはがしても翅の組織にはまったく傷がつかなかったという。
ちなみに接着剤の表面は液体というよりは、薄いウエハーのようなものに覆われているそうだ。ここにはエピフラムと同じく微細な穴が並んでおり、そこから水分が出入りできる。
空気にさらしたり、熱を加えたりすると乾いて固形化し、水をかけると再び軟化するのは、こうした構造のおかげだ。
【アップグレードも検討中】
カタツムリ接着剤は、エピフラムと同じく、デコボコと荒れた表面で一番効果を発揮するが、ガラスのようなツルッとした面にも使えるという。
ミクロな視点から見れば、どんな面でもデコボコしているからだ。
なお、いくら強力とはいえ、水を使うとはがれてしまうので、当然ながら乾燥した環境でなければ使用することができない。
この弱点を克服するために、ヤン氏は、水の代わりに熱や電気で軟化させられるような別の素材を探しているところだそうだ。
この研究は『PNAS』に掲載された。
References:Reversible superglue proves strong enough to hold average man/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:カタツムリの粘液がヒントに。成人男性の体重にも耐えられる貼ってはがせる超強力な接着剤が開発される(米研究) http://karapaia.com/archives/52275847.html
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