アメリカで医薬品(処方薬)の価格上昇が止まらない。2019年上半期だけで値段が879%増しになった薬も

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 アメリカの医療費が高すぎる問題は世界でも話題となっているが、さらには医薬品の急激な価格上昇が問題になっているそうだ。

 アメリカでは、政府ではなく製薬会社が自由に薬価を設定できるようになっている。
そのため市民や政治的圧力にも関わらず、製薬会社は薬価の上昇を続け、薬代を支払えない市民が窮地に陥るといった事態が一層ひどくなっているのだ。

 今回伝えられた内容は、製薬会社が2019年の上半期だけで、3400以上の医薬品の価格を引き上げたというもの。2018年上半期と比較すると、更に17%も上回ったという。

 薬によっては、879%という3桁台の価格上昇になっており、市民がますます頭を抱える状況となっている。
【政治的圧力をものともせず製薬会社は薬価を上昇】

 アメリカの医療現場では、日本のように公的な国民健康保険への加入制度が義務化されておらず、薬剤給付管理(Pharmacy Benefit Manager:PBM)プログラムが導入されている。

 この第3者機関が、製薬会社や保険会社および患者の間に立ち薬価の調整を行い、法外なマージンを取っているがために、薬や医療費全体が高騰する一方だと言われている。

 それらを引き下げようと市民や政治的圧力が続いている中、製薬会社はますます薬価を上昇しているのだ。

 去年5月には、米保健福祉長官アレックス・アザール氏がホワイトハウスでトランプ大統領と処方薬の費用を下げるための計画を発表したが、この時トランプ大統領は、「製薬会社は数週間以内にでも自発的な価格下落を発表するだろう」と大胆にも発言していた。しかし、今に至るまでそのような事実はない。

 その後まもなく、トランプ大統領は薬価の引き上げを継続したファイザー製薬を公に批判。これを受けたファイザー製薬は、去年半ばまでに薬価の上昇を一時停止すると回答したが、結局今年1月には他の製薬会社同様、価格の引き上げを再開した。

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【3400以上の薬価上昇のうちの1つは879%の値上がりに】

 各製薬会社は、2019年上半期だけで、3400以上もの医薬品の価格を引き上げた。
この薬価上昇は、去年上半期のそれより17%も上回り、1つの薬あたりの平均値上げ率が10.5%となった。この数値は、インフレ時の約5倍にもなるという。

 40ほどの薬が3桁のパーセンテージで割り増しとなり、その中でも抗うつ剤Prozac(プロザック)のジェネリック版は、879%の値上げとなった。

 その他、ステロイド剤Mometasone(モメタゾン)は381%、鎮痛剤や咳止め薬のPromethazine(プロメタジン)やCodeine(コデイン)は326%、更にADHD治療のGuanfacine(グアンファシン)2mgは118%と、それぞれ無謀ともいえる値上がりを見せた。

【トランプ政権の要求は今夏にも施行か】

 雇用者へのヘルスケアプランと、低価格の処方薬を求めるサポートをWebベースで手がけているRX Savings Solution(RXセイビングズ・ソリューション)の最高経営責任者マイケル・リー氏は、去年12月にメディアの前で「市民の要求や公の批判はまるで役に立っていない」と話していた。

 同会社は薬剤価格の新しい分析を行っており、去年12月の時点で、リー氏は2019年の薬価上昇数は過去数年より更に大きくなることを予測していたが、まさにその通りになったというわけだ。

 現時点では解決策はないに等しく、急激な薬価の上昇は市民を深く悩ませていることだろう。トランプ政権は、今年の5月にも製薬会社へ圧力をかけ、テレビ広告で医薬品を宣伝する際には価格を伝えることを要求。この取り決めは、今年の夏にも施行される予定とのことだ。

References:ars technicaなど / written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:アメリカで医薬品(処方薬)の価格上昇が止まらない。2019年上半期だけで値段が879%増しになった薬も http://karapaia.com/archives/52276694.html
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