2%の人だけに聞こえる不可解なノイズ「ザ・ハム」の謎

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 それは家の前でアイドリングしている車のエンジンの音に似ているという人も、ガラガラした低音という人もいる。人によって聞こえてくる音は様々だが、一致しているのは、ひっきりなしに聞こえてくるということだ。


 わずか2%の人のみに聞こえるというそのノイズは「ザ・ハム(ブンブン音)」と呼ばれている。神経を苛立たせるそのノイズの原因について、今のところきちんとした科学的な説明はないそうだ。
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‘The Hum’: The Unexplained Noise 2% of People Can Hear

【約50年前に最初の報告】

 それが最初に報告されたのは1970年のこと、イングランドのブリストルにおいてであった。それ以来、謎のノイズが聞こえるという証言は世界中に広がり、人々の精神を侵食している。

 米コネチカット州ブルックフィールド在住の工業施設設備エンジニア、スティーブ・コールハーゼもそんな1人だ。『Doom Vibrations(破滅の振動)』というドキュメンタリー番組で、彼はノイズについてこう語っている。

 「ひどい耳鳴りがするんだ。ひどい日になると脳がぎゅっと潰されているみたいさ。気分が悪くなってくるよ。」

 コールハーゼによると、飼い犬にも聞こえているらしく、音がするようになってからまったく無気力になってしまったそうだ。

【高圧ガスのパイプラインや通信機器と関連性が?陰謀論も】

 番組の中で、コールハーゼは自身が収集した不可解なノイズ汚染の証拠を公開している。その原因を突き止めるために、彼は裁判や調査機器の費用などのために日本円で300万円以上を費やしてきた。

 こうした調査から浮かび上がったのは、ノイズはある直線上に沿って報告されているということだ。
コールハーゼによれば、それは高圧ガスのパイプラインの近辺に集中するらしいのだ。

 これ以外にも、「ハマー(ブンブンいうもの)」と呼ばれるノイズで苦しむ人たちは、電線や無線通信機器、低周波電磁放射といったものが犯人ではないかと疑っている。

 そして、このノイズは往々にして、陰謀論と絡めて語られる。

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【研究では、その3分の1は環境に原因との推測】

 医師たちはこうした訴えを耳鳴り(15%の人に現れる)であるとして否定してきた。しかし、最新の研究からは、それが幻聴ではなく、ハマーたちに聴覚の異常がないことが示唆されている。

 ケンブリッジにあるアデンブルックズ病院の耳鼻科医デビッド・バグリーは、こうした訴えの3分の1は、付近に工場があるなど、環境的な原因によるものだと推測している。

 そのほとんどは音源を特定することができないのだが、一方でバグリー医師自身は、患者の多くは外部の音に対してきわめて敏感な人たちであると考えている。

【それは幻聴や妄想の類なのか?】

 ドキュメンタリー番組の製作者ギャレット・ハーカウィクはこう述べる。

ほとんどの人はザ・ハムのことを妄想と思うかもしれない。それはあまりにも主観的だ、と。そうした人たちは、ほとんどの人には聞こえないものが聞こえると主張しているのだからね。

でも、それが聞こえるという大勢の人たちのことを知れば、何かが起きているということは明らかだ。


 ではガスパイプライン説に信憑性はあるのだろうか?

 「かなり信じられる部分もある。 そうでない部分もある」とハーカウィクは答えつつ、コールハーゼの推測には飛躍があり、陰謀論を絡めてしまっていることも認める。

 「はっきり解明されることはないだろう。それを証明にするには、多方面から協力をえて、骨の折れる作業しなければならないだろうからね。」

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【真偽を超えたところにある真実】

 それでも、もっともらしさといくぶんの怪しさがない混ぜになったコールハーゼの主張に、ハーカウィクは惹かれている。

僕が変わった考えの持ち主について撮るときは、『あいつらの考えが間違っていると知ったらどうなるかな?』なんて考えながら首を突っ込んだりはしない。

それより、どうしてそうした考えを抱くにいたったのか、僕自身は彼らの中に何を見ることができるか、といったことに時間を費やすんだ。

 今回の事例では、コールハーゼの原因究明に対する執念が浮き彫りにされた。そんな執念の調査も、彼が期待したほどの賛同を得ることはなかった。

 しかし、彼の行為に心を動かされた人だっていたのだ。彼を今日も調査に駆り立てる原動力は、そうした人たちの存在だ。

ドキュメンタリーの撮影も似たところがある。何年もかけたプロジェクトなのにほとんど反応がなくてがっかりすることがある。


それでも1人か2人かから、何がしかの意味があったという連絡が来るんだ。それが僕の原動力だ。クリエイティブな人ならスティーブの話に感じるところがあるんじゃないかな。
References:‘The Hum’: The Unexplained Noise 2% of People Can Hear/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:2%の人だけに聞こえる不可解なノイズ「ザ・ハム」の謎 http://karapaia.com/archives/52277416.html
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