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100人に1人程度に発症するとされる自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的なコミュニケーションや対人関係が苦手で、興味や活動に強いこだわりを持つといった特徴を持った発達障害の一種だ。
人によってその度合いは異なり、特に問題なく生活できることもあるが、融通がきかず、強いこだわりを持ったりするために、場合によっては毎日がとても大変なものになってしまうことがある。
その原因をめぐっては、遺伝子から抗生物質やワクチン接種、ウイルス感染、アレルギーまで、さまざまなものが疑われている。
今回、5ヶ国の200万人以上の子供たちを対象とした、これまでで最大規模となる研究が行われた。その結果、自閉症スペクトラム障害を引き起こす最大のリスク要因は遺伝子であることが判明したそうだ。
【自閉症スペクトラム障害の81%は遺伝的な要因】
『JAMA Psychiatry』(7月17日付)に掲載された研究では、自閉症スペクトラム障害(以下ASD)は81パーセントが遺伝的なもので、環境的な要因は20パーセントに満たないと報告している。
さらに母親の体重、多嚢胞性卵巣症候群の有無、帝王切開による出産か否かといった母親側の要因については、「存在しないか、最小限」の影響しかないことも明らかになったと述べられている。
この研究では、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、イスラエル、西オーストラリアで1998年から2011年に生まれた200万人の子どたちの医療記録を対象に、被験者となった子供が16歳になるまで追跡調査した。
なお、その間2万2000人以上が自閉症スペクトラム障害と診断されたという。
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【ただし単一の要因ではない。複数の要因が絡み合って発症】
現実ではしばしばあるように、実際のこの症状は一見したよりもずっと複雑なものだ。何らかの単一の要因によって発症するのではなく、相互に関連する複数の要因によって生じている可能性が高い。
このことは、今回遺伝的な要因が大きいと確認されたとはいえ、なお環境リスク要因も大きな役割を果たしているということだ(ただし、具体的にどれがそうなのかははっきりしない)。
同様に、遺伝子に着目した研究が増加している一方、具体的にどの遺伝子の作用が病気を引き起こしているのか定かではない。
「ご家庭では、ASDを発症させる環境要因に神経を尖らせていることが多いのですが、現実には遺伝的な要因のほうがずっと大きな影響を与えています」と米コーエン小児医療センターのアンドリュー・アデスマン医師は話す。
「そうはいっても、環境的なリスク要因や、それと遺伝的リスク要因との相互作用を完全に無視してしまえるわけでもありません。」
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【本当にASDは急増しているのか?】
ASDの原因が主に遺伝的なものだと指摘する研究は今回が初めてではない。例えば2016年の双子を対象とした研究では、自閉症スペクトラム障害の64~91パーセントは遺伝子に起因していると報告している。
しかし、遺伝的な要因であるならば、最近になってASDが急増しているのはなぜなのだろうか?
例えばアメリカ教育省の統計によると、1993年から2003年にかけてASD症罹患率が657パーセントも増加したという。だからこそ、ASDの要因として環境が疑われてきたわけだ。
これについては、診断基準が変更されていたり、話題になったことで医師が気をつけるようになったことが原因だという説もある。
もしかしたら、実際にはASDが急増しているという事実はないのかもしれないそうだ。
ASDやADHDのような発達障害は、0か100ではない。グレーゾーンが大きく、生活環境や人間関係などで症状が強く出る場合もあれば、不自由がないまま過ごせる場合もある。また、誰でも、発達障害のチェックテストのいくつかに該当するものがある。
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現在までの生活で不自由を感じていなければ問題はないのだが、うつ病だった場合見過ごされてしまう場合もあるという。
追記(201907/30)本文を一部修正して再送します。
References:Study Of Two Million Children Finds What Really Causes Autism | IFLScience/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:自閉症スペクトラム障害(ASD)の原因は約8割が遺伝であることが確認される(国際共同研究) http://karapaia.com/archives/52277560.html
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