太陽の400億倍。超大質量ブラックホールが発見される

Image by Garik Barseghyan from Pixabay
 ブラックホールの中にはそれはそれは巨大なものがあるのだが、またもや言葉ではもはや言い表せないほど大きな怪物ブラックホールが発見された。

 「エイベル85(Abell 85)」銀河団の中心に位置し、地球から7億光年の彼方にある超巨大楕円銀河「ホルムベルグ15A(Holmberg 15A)」――その中心にくだんのブラックホールはある。


 これまでに発見されたものとしては最大級のブラックホールで、その周囲にある星の動きを追跡することで発見されたものとしては最大だそうだ。
【太陽の400億倍の質量】

 銀河と銀河団のダイナミクスに基づく従来の計算では、 Holmberg 15A銀河のブラックホールの質量は最大で太陽の3100億倍と推定されていたが、これらはいずれも間接的な計測でしかなかった。

 今回、「The Astrophysical Journal」(2019年7月24日付け、現時点では査読待ち)に提出された論文は、初めて直接的な計測に成功しており、次のように説明している。
 
軌道に基づく軸対称シュヴァルツシルトモデルを使って、超大型望遠鏡VLTのマルチユニット分光探査機(MUSE)から観測されたHolmberg 15Aの恒星系力学を分析。Holmberg 15Aの中心に、太陽の(4.0 ± 0.80)× 10の10乗倍の質量がある超質量ブラックホールを発見した。

 (4.0 ± 0.80)× 10の10乗倍――4の下にゼロが10個。すなわち太陽の400億倍だ。

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銀河団 Abell 85 image credit:NASA/CXC/SAO/A.Vikhlinin et al./SDSS
【太陽を飲み込んでなお余りある】

 過去には、今回のブラックホールを上回る大きさのものが発見されたこともある。それは「TON 618」というクエーサーで、間接的な計測ではあるが、太陽の660億倍と推定されている。
 
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 それに劣るとはいえ、Holmberg 15Aのブラックホールは太陽の400億倍の質量を持つ。そのシュヴァルツシルト半径(光が脱出できない半径。事象の地平面)は、太陽系にある全惑星の軌道を飲み込んでも余りあるほどだ。


 ――が、その余りもかなりのものだ。

 たとえば、冥王星の太陽からの距離は平均39.5天文単位(AU。1AUは地球と太陽の平均距離)ある。さらにその先にある太陽圏界面(星間物質との衝突によって、太陽風がそれ以上先に進めなくなる境界)はおよそ123AUだと考えられている。

 今回の論文によって明らかになったブラックホールの質量から考えれば、そのシュヴァルツシルト半径は790AUだと推定される。

 それほどの大きさを想像しようとしても、脳が停止するのが関の山だろう。もはや思考も言葉も追いつかない。

【2つの早期型銀河が衝突】

 シミュレーションの結果からは、ブラックホールが鎮座するHolmberg 15Aは、消耗した銀河核を持つ2つの早期型銀河が衝突し融合したことで形成されたらしいことが判明している。

 研究チームは今後もこの怪物の研究を続け、これほどまでのブラックホールがどのようにして形成されたのか解き明かすつもりだという。

 こうした試みは、銀河の融合がどの程度の頻度で発生しているのか、宇宙にはあとどのくらい同じような超質量ブラックホールが発見されるのを待っているのか、といったことを推測する手がかりにもなるそうだ。

追記(2019/08/10)本文を一部修正して再送します。
References:Astronomers Just Found an Absolutely Gargantuan Black Hole The Mass of 40 Billion Suns/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:太陽の400億倍。
超大質量ブラックホールが発見される
http://karapaia.com/archives/52278003.html
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