
Mabel Amber, still incognito... from Pixabay
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自制心の大切な指標のひとつに、「満足遅延耐性」というものがある。
つまり将来得られるだろうもっと大きな満足を手にするため、目の前にある小さな満足をぐっと我慢する能力だ。
子供の自制心を調べるマシュマロ実験によると、人間の子供ではこの満足遅延耐性が3歳から5歳にかけて発達することがわかっている。これは未来を計画する力など、認知能力の発達具合を示すものでもある。
だがその能力は人間だけに備わっているものではない。カレドニアカラスにも目先の欲を我慢する能力が備わっており、満足遅延耐性は人間の子供と同レベルなのだという。
【カラスは目先の欲求をどこまで我慢できるのか?人間の子供と比較】
満足遅延耐性をテーマにした研究はいくつもあるが、英ケンブリッジ大学の研究グループが考案したのは、人間の3~5歳の子供だけではなく、カレドニアガラスの我慢力までをも試せる方法だ。
それは透明のケースの中で回転するトレイを使ったものだ。このトレイにはご褒美がふたつ載せられている。ケースには窓が開いているので、トレイが回転してご褒美が窓のそばまでくれば、それを取ることができる。
ただし、最初にやってくるご褒美は普通のご褒美だ。これをぐっとこらえて見逃せば、次にやってくるもっと豪華なご褒美を手に入れることができる。最初のご褒美を我慢できるのならば、満足遅延耐性は高いということだ。
なお、子供もカレドニアガラスも実験の対象になるとはいえ、まったく同じやり方で行うわけではなく、ご褒美はそれぞれが興味を持てるようなものでなければならない。
そこで子供には普通の動物のステッカーとキラキラ光る大きな動物のステッカーを、カレドニアガラスには量や質の違う餌がご褒美として用意された。また、カレドニアガラスにはルールを言葉で説明することができないので、多少の訓練もなされた。
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Miller et al., Animal Cognition, 2019
【見た感じでは子供とカラスの自制心は同等】
やり方が違うために、子供とカラスを直接比較するのはむずかしいだろうが、少なくともどちらもすぐに手に入るご褒美を我慢し、もっといいご褒美を手に入れるために待つことができた。
ただし、子供もカラスも、量が違うとき(肉1粒と肉4粒など)よりも、質が違うとき(りんご1粒と肉1粒など)の方がきちんと我慢することが多かったという。
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Image by wip-studiolublin/iStock
【単純に人とカラスを比較できないが、自制心は備わっている】
また、ご褒美のどちらかをカバーで隠して、同じことをするという実験も行われた。この場合、子供の成績に特に変化はなかったが、カラスの場合はかなり手こずったようだ。
ただ、カラスがこの実験をうまくこなせなかった原因が、子供との認知能力の差にあるのかどうかははっきりしない。
子供は実験者がトレイにご褒美を準備する姿を観察し、どこに欲しいものが置かれているかあらかじめ確認しておくことができた。
一方、カレドニアガラスは野生で捕獲した個体であって、人間が近づくと怯えてしまうため、実験者がご褒美を準備するときはそこから離されていた。そのため、事前にご褒美の位置を確認することはできず、どこにお目当てのご褒美があるのか消去法で推測しなければならなかった。
このような実験状況の違いが、結果に影響を与えた可能性も考えられるという。
いずれにせよ、子供もカラスも立派な自制心を見せてくれたのだ。もうすぐイベント続きのシーズンが到来するが、私たちだってちゃんと自分を自制しなければ面目が立たないというものだ。
この研究は『Animal Cognition』(10月19日付)に掲載された。
References:Delay of Gratification in Kids and Crows | Psychology Today/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:カラスは人間の子供と同じくらい自制心があり、目先の欲求を我慢することができる(英研究) http://karapaia.com/archives/52285076.html
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