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周りの人が自分をどう思っているのか、どうすればわかるだろうか?
他人の気持ちを読むことが得意な人なら、言葉や仕草などから察することができるだろう。にこにこと微笑みながら褒め言葉を言われたら、その相手はあなたに好印象を抱いている可能性が大だ。
近づいたら顔を背けられたのなら、その人はあなたと関わりたくないと思っている可能性はある。しかし、もしかしたら何か別のことに気を取られていただけなのかもしれない。
あるいはこんな状況はどうだろう。前方に楽しそうにおしゃべりをしている人たちがいる。ところが、あなたの姿を目にした途端、不意に会話が途絶えてしまった。あれっ、自分のせい? と少々気になる瞬間だ。
新たなる研究によると社会不安レベルの高い人は、他人のどんな表情にも反応しているわけではなく、ネガティブなもののみに過敏に反応していることがわかったという。
【ネガティブな反応を極端に恐れる社会不安障害】
人前が苦手、緊張しやすい等のシャイな性格傾向がある人は多いが、その緊張や不安が特に強く、それらの状況を避けることにより、毎日の生活や仕事に支障をきたしてしまうと社交不安障害の可能性が高くなる。
社交不安障害(SAD)は人からの注目されたり、人と接することで極度の緊張を覚え、心身や生活に様々な支障がおよぶ病気だ。
社会不安障害の人、あるいは社会不安レベルが高い人にとって、他人と関わるのは気が重いものだ。そうした人たちは、自分に悪い評価が下される可能性のある状況を極端なまでに恐れ、不安に思う。
ごくありふれた他人とのやりとりであってもいつも緊張し、はっきりしない状況をやたらと悪く捉えてしまいがちだ。
イスラエル、バル=イラン大学のロイ・アズレ氏は、社会不安障害について、「ネガティブな社会的手がかりが強化されて処理されてしまうことが症状の根幹にある」と述べている。
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【表情の変化はどの段階で認識されるか?】
アズレ氏らの研究グループは、この仮説を検証するために、モデルの表情が少しずつ変化する様子を映したビデオを使って実験を行った。
ビデオには笑顔から不快な表情へ、その反対に不快な表情から笑顔へと徐々に変わる顔が映し出される。被験者はそれを見て、表情が変わったと思ったらビデオを停止する。
アズレ氏らが推測したように、社会不安障害の人がネガティブなサインに極端なまでに敏感であるのなら、社会不安のレベルが高いほど、早い段階でビデオを停止するはずだ。
なお、このビデオの効果を際立たせるために、ビデオ鑑賞に先立って、被験者には「サイバーボール」という拒絶感を与えるゲームをプレイしてもらった。
サイバーボールは一見すると3人のプレイヤーでボールをパスするゲームなのだが、じつは本当のプレイヤーは被験者1人しかおらず、残りのプレイヤーはいわばサクラだ。
最初は被験者にパスが回ってくるので受け入れられていると感じられるが、途中でパスが回ってこなくなり、そのせいで拒絶されたと感じさせられる。
このようにして仲間外れにされたときの精神状態では、表情のネガティブな変化に対して特に敏感に反応するだろうというのが、アズレ氏の狙いだ。
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【ネガティブな表情だけ、敏感に反応してしまう】
ネットで募集された約340名の参加者は、事前に社会不安レベルを診断するアンケートに回答してから、サイバーボールをプレイ。次いでビデオを鑑賞した。
実験開始前の予想通り、笑顔から不快な表情に顔が変化するビデオを見せたとき、社会不安レベルの高い人は、表情のわずかな変化に対しても反応していた。
しかし、表情の変化を逆にしたビデオでは、そのような敏感さは一切観察されなかった。
社会不安レベルが高い人は、どんな表情に対しても敏感に反応しているわけではなく、ただネガティブな表情に変化した場合にだけ強く反応しているようだ。
逆に、社会不安レベルが低い人の場合、ネガティブな表情からポジティブな表情への変化に対してより敏感であることもわかった。
このことは、社会不安レベルの高い人は、受容から生じたポジティブな社会的サインを読み取るのが苦手であるらしいことを示唆している。
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【結論を出す前にもう一度よく観察しよう】
アズレ氏が述べているように、社会不安レベルが高く、人に良く思われていないと思い込みがちな人は、最初に感じたネガティブなサインからすぐさま最悪の結論に飛びつくのをちょっと待ってみるといいかもしれない。
そして、相手が示している感情の手がかりをもう少しよく観察してみよう。人の感情は揺れ動くし、場当たり的だし、入り混じったものだ。
ネガティブなサインがあったとしても、ポジティブなサインだって発している場合が多いのだ。それを感じ取ることができれば、不安も少しは解消されるかもしれない。
さらに言えば、ほとんどの人が自分のことで頭がいっぱいだ。常にあなたのことばかりを考えているわけではない。
人のことは案外適当に考えていたりするもので、もしネガティブなサインを見抜いてしまっても、その評価はいとも簡単に変化する。
マイナススタートの方が評価は逆に上がりやすいというメリットもあるかもしれない。
大体自分のことですら良くわかっていない人が多いのだから、他人のことをきちんとわかっている人なんてそれほど多くいないはずだ。
この研究は『Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry』に掲載された。
References:Can Social Anxiety Lead You to Misread Facial Cues? | Psychology Today Australia/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:社会不安レベルの高い人は、他人の嫌そうな顔に過敏に反応してしまう(イスラエル研究) http://karapaia.com/archives/52286018.html
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