羊が人化?「ヘントの祭壇画」の修復で聖なる羊がヒューマノイド・シープに変貌(ベルギー)


 ベルギー北西部ヘント(Ghent)のバーフ大聖堂に所蔵されていた、初期フランドル派の最高傑作と言われるファン・エイク兄弟による油彩画「ヘントの祭壇画」の中心部分のパネル絵の修復が、ヘント美術館において完成した。

 この祭壇画においては、デザインを復元するプロジェクトが年月をかけて進行されており、現在の時点では丹念に行われ続けてきた修復が内部上段部分を残して完了した形となった。

 それにより、内部下段の真ん中にある『神秘の子羊』の羊の顔が明らかになったが、これまでとは全く異なる人間味あふれるリアルな羊の顔に、戸惑いを隠せないSNSユーザーもいるようだ。
【2012年から修復作業が行われていたヘントの祭壇画】

 「ヘントの祭壇画」は、1432年にヤン・ファン・エイクと兄のフーベルト・ファン・エイクによって完成された作品で、初期フランドル絵画の最高傑作と言われ、兄弟が確立したこの油彩画の技法は、イタリア・ルネサンスにも大きな影響を与えたと言われている。

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 縦約3.4メートル、横約4.4メートルという大きな祭壇画は、観音開きのような枠に裏と表それぞれ異なる絵が8枚ずつパネルではめ込まれており、その枠は折り畳まれた時に中心部の4枚の内装を覆い隠すようデザインされている。

 この祭壇画は完成直後に上塗りされたが、このほどベルギーのヘント美術館にて合計20枚のパネルを修復・復元するプロジェクトが進行中であり、去年12月には子羊を描いた中央部分が修復されたことが報じられ、公開された。

【修復で羊の顔が明らかになりSNSで戸惑いを呼ぶ】

 修復作業は、上塗りされていた層を顕微鏡とメスを用いて細かく削り取っていくもので、外側のパネルの絵は2012年から修復作業が開始され、2016年に修復が完了した。

 次に、内側の下段に位置する絵画を3年がかりで修復する作業が行われていたが、その結果、上塗りに阻まれてこれまで見ることのできなかった細部が明らかになるほどの素晴らしい復元が完成したのだ。

 真ん中のパネルに描かれている羊は、別名『神様の子羊の礼拝』とも呼ばれ、イエス・キリストを表す羊が生贄に捧げられる様子が描かれている。

 その羊の目の位置や耳の形が、復元前と後では大きく異なることが明らかになった。より鮮やかに描かれていることで、羊の輪郭をはじめ全てが明確になっており、顔が全体的になんだか人間のようにリアルである。


【修復チーム関係者らは復元に大満足】

 修復チームの指揮を執っているエレーヌ・デュボアさんは、本来の子羊の姿が明らかになり世間が衝撃を受けたことを認めている一方で、ファン・エイク兄弟が描いたオリジナルの技法が蘇ったことを喜んでいる。

 また、ベルギー王立文化遺産研究所も、修復チームの技術を次のように称賛した。

絵画の本来の鮮やかさや秀逸な色使いが見事に復元したことは「素晴らしい」の一言で、これまでの修復の結果については、驚きと畏敬の念しかありません。

復元によって、粗い上塗りの黄色く厚いワニスの層から解放された、ファン・エイク兄弟の崇高な妙技が豊かに浮かび上がったことがわかります。

 しかしSNSでは、この聖なる羊の変貌に衝撃を受けた人は少なくなかったようだ。Twitterでは、アマチュア美術批評家らが羊の顔をミームにしたツイートや驚きのコメントを寄せた。


 中には、ヒューマノイド羊の顔がコメディー映画『ズーランダー』のベン・スティラーや、


Facebookの創設者兼CEO(最高経営責任者)マーク・ザッカーバーグに似ているというツイートもあるようだ。


 なお、2020年2月1日~4月30日までは、ヘント美術館にてファン・エイク特別展が開催される予定となっており、この祭壇画は今後元の所蔵場所である聖バーフ大聖堂へ戻され、一般公開される。

 最終段階となる内部上段の修復作業については、2021年に再開されるということだ。

References:artsy.netなど / written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:羊が人化?「ヘントの祭壇画」の修復で聖なる羊がヒューマノイド・シープに変貌(ベルギー) http://karapaia.com/archives/52287161.html
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