
lucentius/iStock
温かいスープは身も心もホットにしてくれるものだ。だがその適温を見つけるのは難しい。
なまぬるいスープでは不満が残るし、熱々のスープでは舌を火傷してしまう。
童話「3びきのくま」にでてくる少女、ゴルディロックスは3つの中からちょうどよい温度のお粥を選んだことから、「ちょうどよい」という概念は、ゴルディロックスの原理と呼ばれるようになった。
幸いなことに我々は、科学を利用すれば、自分のスープの適温を見つけることができるという。
【食べ物の温度と味の関係】
玄人素人を問わず、料理人なら「温度が食べ物の味に影響を与える」ということはわかっている。チェダーチーズは温かいとより酸っぱく感じ、セイヴァリーハムは、冷たいとより塩気を感じる。
こうした風味の違いの理由は複雑だ。舌の受容体が原因でそう感じることもあれば、食品そのものの化学変化で変わることもある。温めたり冷やしたりすると、後から変化が生じる食品もある。
例えば、トマトらしい風味を存分に特徴づける遺伝子は、低温にさらされると「オフ」になってしまう。だから、冷蔵庫に入れないで、と警告している料理本もあるくらいだ。
[画像を見る]
congerdesign from Pixabay
【高い温度で煮るとおいしくなる】
同じ原理がスープにも当てはまる。温度が違うと、スープの風味のさまざまな特徴が、強まったり、ぼんやりしたりする。
2017年、スペインの研究者が、従来どおり調理されたチキンスープにおける、アミノ酸やヌクレオチドなどの味覚混合物の発生率をテストした研究結果を発表した。
サンプルのスープは、86℃から103℃の温度で3~5時間調理したもの。研究チームは、うまみに関係する味覚混合物が温度の上昇とともに増えたことを発見した。
調理時間が長くなると、風味混合物もまた増加したが、こうした影響は温度が決め手になっていることがほとんどだ。
つまり、温かいスープはより風味が増すということだ。
[画像を見る]
TheCrimsonMonkey/iStock
【スープは室温以下になると塩味が強くなる】
だが、調理時の温度と提供するときの温度の区別をつけることが大切だ。
煮えたぎっている100℃のスープを出すことはできないし、かといって65℃以上でも舌を火傷するかもしれない。ちゃんと舌で味を感じることができなければ、スープのうまみを増してもなんの意味もない。
スープを冷やすと、風味は変わる。2016年の研究によると、うまみはスープの温度が室温または室温以下になると悪化し、塩気が強くなるという。
この現象はほかのいくつかの研究でも説明されている。訓練を受けた8人の被験者と、訓練を受けていない62人の被験者に、温度が40℃~80℃の塩水、チキンスープ、味噌汁の塩気を評価してもらった。
訓練を受けたパネリストは、熱くてもぬるくても塩気の違いを感じなかったが、その他の人たちは、冷めている液体のほうが塩辛く感じたと言っている(研究では、その理由については踏み込んで説明していない)。
温度はまた、ほかの風味にも影響も与える。酸っぱさはその液体が温かいほど強く感じ、苦さは冷たいほど強く感じるという。
さらに、甘さの知覚は冷たい食べ物ほど強くなる。アイスクリームのような冷凍菓子が溶けると、とても甘く感じることの説明になりそうだ。
[画像を見る]
Freer Law/iStock
【あなたにとってのスープの最適な温度は?】
では、本題であるスープの最適温度を見つけるにはどうしたらいいか?
その答えはその時々によるという。これでは答えになっていないが、あなたが、少し味が濃いものが好きか、うまみが強いものが好きか、などによって異なる。
さらに、あなたが20%の割合でいる食べ物の温度に敏感な人かどうかにもよる。この20%の人たちは、実際に食べ物や飲み物が口に入っていなくても、舌のわずかな範囲を熱っしたり冷やしたりするだけで、味覚を引き出すことができる能力があるという。
[画像を見る]
Deagreez/iStock
【一般的なスープの最適な提供温度は67℃】
一般的に、スープの最適な提供温度は、舌の痛覚閾値周辺が感じる温度で、およそ67℃だと言われている。
その理由はいくつかある。ほとんどの人は、舌が熱い(痛い)と感じないギリギリの温度でスープを提供されることを望むだろう。
人間の味蕾には、TRPM5と呼ばれる熱に敏感な小さなタンパク質が存在する。これは、うまみを知覚するのに重要で、食べ物が温かいときに一番よく働く。
食べ物の温度が高いと、味の強みを増幅するのに重要な要素であるアロマもより多く放出される。「熱が加えられると、その食べ物の揮発性物質であるエッセンシャルオイルが放出され、食べ物の芳香や風味が増します」フードライターのアマンダ・ヘッサーは言う。
温かい料理が冷めると風味が変化するので、例えば冷たいサワークリームに辛いチリソースをトッピングするというようなコントラストをつけて、味覚受容体を活性化するのがお勧めだという。
[画像を見る]
【個人差を加味するとスープの適温は57℃から72℃の間】
研究者たちは、スープの適温と熱すぎる温度の間の境界線をどこで引くか、という研究を数多く行ってきた。
その結果は、どうやら、57℃から72℃の間がベストなようだ。
76℃より熱いスープは、ちょっとずつしか口に運ぶことができず、スプーンをふーふーして冷まさなくてはならない。
54℃より低いスープは、ただのぬるい味気ない食べ物にすぎない。この中間くらいの温度のスープが、舌を火傷することなく、あなたの味蕾を満足させてくれるはずだ。猫舌の人は57℃からやってみよう。
これは海外のスープを対象にした研究なので日本のみそスープ(味噌汁)がこれにあたるかどうかはわからないが、料理用の温度計を用意して、味噌汁の温度を57℃から72℃の間にしてみよう。
いつもの味噌汁よりおいしく感じたら大成功だ。
References:What's the Best Temperature for Soup? | Mental Floss/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:スープに最適な温度は?科学で検証してみた http://karapaia.com/archives/52287203.html
編集部おすすめ