
大人も子供も感動するディズニー映画『ライオン・キング』では、ヒヒのラフィキがシンバをライオンの群れに向かって抱え上げるシーンが印象的だ。このほど南アフリカで、そんなワンシーンを彷彿とさせるような光景が捉えられた。
ヒヒがライオンの子供を抱いていたのである。だがこれは現実の世界。感動的に見える物語の裏には、自然界ならではの事情があったようだ。
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Baboon Adopts and Grooms Lion Cub | UNBELIEVABLE!
【ヒヒがライオンの赤ちゃんを運んでいる姿を目撃】
南アフリカ共和国北東部にあるアフリカ有数の広大な野生生物保護区で知られる「クルーガー国立公園」で、2月1日、サファリガイドをしていたカート・シュルツさん(43歳)は、ヒヒが赤ちゃんライオンを抱きかかえ、連れている姿を目撃した。
ヒヒが赤ちゃんライオンを抱く姿は、まるで映画『ライオン・キング』のワンシーンのように見えたという。 だが現実は映画のストーリーとは程遠いことを、シュルツさんはこれまでの経験で良く知っていた。
過去に、ヒヒの集団がヒョウの子供を残酷に殺している光景を目撃したり、ライオンの赤ちゃんを殺したりする話を何度も聞いているからだ。
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【ライオンの赤ちゃんを運んでいたのはオスのヒヒ】
そのため、今回もそのような状況になるのではと緊張しながら暫く見守っていたが、どうやらヒヒはライオンの赤ちゃんに毛づくろいをして愛情を示しているような仕草を見せたので、シュルツさんは驚いた。
私たちは、緊張しながら成り行きを見守っていました。赤ちゃんライオンを抱えたヒヒは、メスだと思ったのですがオスだったことにも驚きました。
そのオスのヒヒは、赤ちゃんライオンを腕に抱えて木にぶつかりそうになったり、枝を飛び移ったりしていましたが、その後まるでメスのヒヒが我が子にするように赤ちゃんライオンをグルーミングし始めたのです。
ただ、木の下に多くのヒヒが集まっていたので、赤ちゃんライオンが今にも集団で襲われるのではとヒヤヒヤしていました。
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【ヒヒはライオンの赤ちゃんを連れてその場を去る】
アフリカ南部や東部を20年ガイドして来たベテランのシュルツさんでさえ、このような光景は「珍しい」と言えるものだった。
しかし、結局ヒヒは赤ちゃんライオンをそのまま連れ去って行ってしまったことが後になってわかったという。
その後、赤ちゃんライオンがどうなったのかは不明だが(のちに助からなかったことがわかったらしい)、シュルツさんは「このような状況で、ライオンの赤ちゃんが生き残れるチャンスは低いでしょう」と話している。
自然は、多くの場合において残酷なのです。幼い捕食者の生存は容易ではありません。
ライオンの子供は成長するにつれて、ヒヒに脅威を与えるようになるが、赤ちゃんライオンでは集団ヒヒに抵抗する術などない。ヒヒは集団となるととにかく強いし賢いのでライオンと言えども太刀打ちできない場合も多いのだ。
このような光景は最も興味深い目撃例の1つであると語ったシュルツさんだが、同時に野生動物の生きる厳しさについても改めて実感させられたようだ。
自然界では、映画のように人間が思い描くハッピーエンドにはならないが、何をもってハッピーエンドとするのかだって、我々人間の思惑次第だ。
ごく稀に人間目線ファンタジーな展開になることもあるが、レアケースだからこそ話題となるのだろう。人間の作る物語だって「みんな幸せに暮らしました」の後、本当に幸せのままだったかどうかなんてわからないのだから。
References:theworldnewsなど / written by Scarlet / edited by parumo
記事全文はこちら:ライオンの赤ちゃんがヒヒに抱かれる。
『ライオン・キング』のワンシーンのようだと話題になったがその裏にはこんな現実が http://karapaia.com/archives/52287536.html
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