刺すだけじゃなかった。毒入り手榴弾をばらまくクラゲの存在が確認される(米研究)

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 「スティンギング・ウォーター」という謎の現象がある。

 穏やかな海で泳いでいると不意にクラゲに刺されたかのようなヒリヒリとした感覚に襲われる。
だが周囲を見渡してもそれらしい生物はいない。まるで水に刺されたかのようだ――。

 この何もいないはずなのに、クラゲ刺されたかのような痛みを感じる恐ろしいミステリーがついに解明されたようだ。

 アメリカ海洋調査研究所の研究グループが『Nature Communications Biology』(2月13日付)に掲載した研究によれば、海の中には毒入りの手榴弾をばらまき獲物を捕食するクラゲが存在するのである。
【上下逆さまで海底に潜むサカサクラゲの仲間】

その手榴弾で武装したクラゲは「サカサクラゲ」や「カシオペア」と呼ばれる種の仲間(学名 Cassiopea xamachana)だ。

 大西洋西部の暖かい地域、カリブ海、メキシコ湾などに生息するクラゲで、礁湖やマングローブのような浅く隠れ場所が多いところに生息している。

 ユニークなのはその姿だ。不思議なことに上下逆さまになって、水中のゴミなどで身を隠し、海底でじっとしているのだ。

 しかも普通のクラゲと違って触手がないために、どのようにして獲物を捕食しているのかも長年の謎であった。

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【毒入り手榴弾を散布して獲物をせん滅】

 その奇妙かつユーモラスな見た目ほど甘い相手ではないようだ。サカサクラゲは逆さまの状態で頭上(足元?)へ向けて大量の小球を放出するのだ。これを「カシオソーム(cassiosome)」という。


 カシオソームは粘液に包まれた中空の小球で、髪の毛のようなフィラメントと刺胞で覆われている。フィラメントはカシオソームが浮遊しやすくするためのもので、刺胞は当然ながら触れたものに毒を送り込むためのものだ。

 人間に触れれば、人によって痒みや火傷のような感覚を覚えることもあるだろうが、命に別状はない。

 しかし小さな生き物ならばあっという間に無力化されてしまう。粘液はクラゲにも付着しているので、あとはそれを手繰り寄せて美味しく頂くだけだ。

カシオソームで大量のアルテミア(エビに似た生物)をせん滅する様子

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Brine Shrimp Succumbing to Balls of Stinging Cells From Jellyfish

 つまりサカサクラゲは毒入りの手榴弾をちょうど漁業の投網のように放出し、動くことなく獲物や捕食者を制圧することができるということだ。

 「泳げないクラゲのまったく新しい刺す戦略です。この戦略によって、相手に触れることなく刺すことができます」と、研究グループの1人、米テキサス大学のアン・マリー・クロンペン氏は話す。

なお、カシオソームはさらに4種のクラゲで確認されたそうだ。ということは、他にもまだまだこの危険な毒入り手榴弾で武装した仲間が見つかるかもしれないわけだ。

References:smithsonianmagなど/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:刺すだけじゃなかった。毒入り手榴弾をばらまくクラゲの存在が確認される(米研究) http://karapaia.com/archives/52287937.html
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