カニの聖地、クリスマス島ではカニを踏まないように車に細工している件(オーストラリア領)
 日本の紅葉に遅れること1~2か月、11月~12月頃に、オーストラリア領のクリスマス島では赤いものが道路を埋め尽くす。だが紅葉ではない。
むしろ落葉を食べていたりもする。

 道路を真っ赤に埋め尽くすのは、カニなのだ。クリスマス島名物、「クリスマスアカガニ」である。

 カニの群れに地面が覆い尽くされる様は壮観ではあるが、そこで暮らす人々にとっては、また困ったことでもある。文字通り「足の踏み場もない」のだから。ましてや車で通り抜けることは不可能だ。

 しかし「不可能だ」と言って終わらせるわけにはいかない。そこで、現地では様々な工夫がされているのである。

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道路を埋め尽くすカニを轢かないための工夫 普段は熱帯雨林の中に巣穴を掘って暮らしているアカガニだが、産卵期に限っては海辺に出てくるのである。卵を海中に産み出すためだ。

 しかし、森から海に到達するためには道路を何カ所か横切らなくてはならない。人間の方も工夫して、カニ用の歩道橋や地下道を設置したり、一部の道路は車での通行を禁止したりしている。
[画像を見る] [画像を見る]  だがそれでも、道路上にカニが満ち溢れているのだ。そして、カニ相手に交通事故を起こしてしまうと、その硬い甲羅でタイヤがパンクする恐れもある。

 そんな困った状況を知恵と工夫で乗り切ったのが、クリス・ブレイさんだ。クリスさんと妻のジェスさんは、島内にロッジを2件所有しており、食料や日用品を運び込むために車は必須。

 そこでクリスさんが工夫したのが、この「カニ除け」だ。人間相手の交通事故と違って、カニが車体にぶつかる恐れはない。そこで、だ。要はカニがタイヤの下に入らなければいいのである。[画像を見る]  この動画の通り、「カニ除け」を装着して徐行することで、交通事故を起こさずにカニの群れの中を通過できるという訳なのである。クリスマスアカガニの一生 クリスマス島はオーストラリアの北西、インドネシアのジャワ島のすぐ南に位置する。インド洋に浮かぶこの島は、人口約2,000人、面積の60%以上が国立公園に指定されている。[画像を見る]  クリスマスアカガニは、クリスマス島と、その西南西にあたるココス諸島にしか生息していない固有種だ。
個体数は数千万匹と多く、現在のところ絶滅等の恐れはない。また、雑食性であるため人間の食用には向かないそうだ。

 11~12月の産卵期に無事に道路を横断して海岸に到着したカニは、そこで交尾をし、メスは海中に産卵する。交尾と産卵の後には、親ガニは森の巣穴へと戻っていく。

 海中で孵化した幼生は、3~4週間を海で過ごし、脱皮を繰り返して成長する。その後は陸に上がって森を目指し、4~5歳になると、親ガニとして交尾と産卵のために海へ向かうようになるのだ。[画像を見る] 環境に配慮したロッジ クリスマス島でクリスさんとジェスさんが営んでいるのは、"Swell Lodge" という名のリゾートロッジである。バスルームからは熱帯雨林が見え、海に向って開かれたデッキでは、海鳥が風に乗って舞うのを目の高さで眺めることができるのだ。[画像を見る]  このロッジは、オーストラリアにおける最高レベルの環境配慮型ツーリズムを証明する "Advanced Ecotourism" を獲得、また、環境持続性が高く、同時に確実な自然体験が保証される "Climate Action Business" にも指定されている。

 そんなロッジであるからには、カニとの交通事故予防以外にも、様々なエコ設備が用意されている。太陽光発電はもちろんのこと、例えば、水を全く使わないトイレ、自然環境で分解可能なシャンプーやティーバッグ、ココナッツの殻からつくられた下水フィルターなどだ。

 また、クリスマス島で我々を出迎えてくれるのは人間とカニだけではない。
海中、空中、そして陸上にも、個性豊かな生き物が暮らしている。いつの日か実際に訪ねてみたい島だ。[画像を見る] [画像を見る] References: Boing Boing / Swell Lodge / Wikipedia など / written by K.Y.K. / edited by parumo

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