北極にぽっかり開いた過去最大のオゾンホールがついに消失

記録史上最大の北極のオゾンホールが消失 / Pixabay
 3月に北極上空に出現した、単一のものとしては記録史上最大で異例なるオゾンホールがついに閉じたそうだ。

 4月23日、「2020年に北半球にできた異例のオゾンホールが消えた」と、欧州コペルニクス大気監視サービスの研究者がツイート。1月近くも北極上空にぽっかりと開いていたそれは、始まりと同様に、唐突に終わりを迎えた。
【北極では異例の巨大オゾンホール】

 オゾンホールとは、南極や北極上空の成層圏のオゾン層におけるオゾンの濃度の減少を指す。

 問題のオゾンホールが北極上空に開いたのは、3月下旬のこと。南極でなら毎年秋に大きなオゾンホールが生じるが、北極では春にオゾンの濃度が増すのが通常で、この時期にオゾンホールが生じるのはレアケース。100年に1度と懸念されるほど異例の事態であった。
  
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北極のオゾン層の状態。(左)2020年4月26日、(右)2020年3月18日 紺色と水色はオゾンの少ない場所で、黄色と赤はオゾンの多い場所
image by:NASA Ozone Watch
【北極のオゾンホールの原因は極渦によるもの】

 その原因は、北極で吹いた異常な風のために、数週間ずっと冷たい空気が上空に留まっていたことであるようだ。『欧州宇宙機関』によると、こうした風を「極渦(きょくうず)」というそうだ。

 極渦は冷たい空気の檻のようなものを作り出し、やがて上空に雲を生じさせる。こうしてできた雲が、塩素や臭素といった人工的な汚染物質と混ざって、周囲にあるオゾンを破壊する。結果出来上がったのが、グリーンランドの3倍もある巨大なオゾンホールだ。

 だが先日、ついに極渦が消えて、オゾンをたっぷり含んだ空気が北極上空に流れ込めるようになった。

 こうした大きなオゾンホールが今後も北極に生じるのかどうか、現時点ではっきりしたことは言えないようだ。


【南極では縮小傾向】

 一方、ほぼ40年間もオゾンホールが観測されてきた南極では、今後もしばらくは毎年見られることだろう。
 
 しかし、それもやがては塞がるだろうことについて、科学者は楽観的だ。2018年に「世界気象機関」が公表したアセスメントでは、2000年以降、南極のオゾンホールは10年毎に1~3%ほど縮小していると述べられている。

 とは言っても、すぐに失くなるわけではなく、完全に塞がるのは2050年以降とされている。

 じつは地球温暖化による気温の上昇も、こうした縮小傾向の原因の1つだが、もちろん1987年にモントリオール議定書が採択され、世界でオゾン層破壊物質の利用が禁止された成果でもある。

 なお、新型コロナウイルスのパンデミックにより人間の活動が制限されたことで、大気汚染の改善が各所で報告されているが、北極のオゾンホールの変化とコロナの関連性は認められないと研究者は語っている。

References:esa / nature/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:北極にぽっかり開いた過去最大のオゾンホールがついに消失 http://karapaia.com/archives/52290434.html