一刻も早いワクチン完成のため、世界中から2万人以上の人々が新型コロナウイルスを感染させる治験に志願

自らコロナウイルスの感染試験を志願した世界中のボランティア /iStock
世界中の科学者たちが新型コロナウイルスに効くワクチンの開発を急ピッチで進めている。こうした動きを支援するために、今大勢の人たちが自らウイルスに感染する治験に志願しているそうだ。


 「1 Day Sooner」というキャンペーンでは、ワクチン開発を迅速に行うため、健康で比較的リスクの低い成人に「ヒト感染試験(human challenge trial)」への参加を呼びかけた。

 その結果、5月24日現在、102の国から25104人のボランティア志願者が集まっている。
【意図的にコロナウイルスを感染させる治験】

 一般に治験では、開発中のワクチンを数千人に接種して、その結果を非接種グループと比較し、安全性と効果が確かめられる。

 だがこの場合、ワクチンを接種された人たちがウイルスに接触するかどうか確実ではないという問題がある。ウイルスが接触しなければ、ワクチンが効果を発揮するのかどうか判断することはできない。

 1 Day Soonerのサイトには次のように説明されている。


こうした従来の治験では、ワクチンが接種された後、参加者は帰宅し、普段の生活を送りながら実社会において予防効果があるのかどうか確かめられます。

しかし参加者のうち、病気に接触するのは一握りであるために、ワクチン接種グループとプラセボグループとの違いを明らかにするには、それだけ大勢の参加者とかなりの時間が必要になります

 しかしヒト感染試験では、自らの意思でウイルスに感染してくれる人が100人いればいい。それだけの参加者がいれば、ワクチンの効果と安全性をすぐに確かめることができるのだ。

 こうした取り組みは、過去にも腸チフス、コレラ、天然痘、デング熱、ジカ熱などでも行われてきたという。

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Foremniakowski/iStock
【治験のリスクを最小限に】

 もちろん新型コロナにあえて感染してもらおうというのだから、リスクがあるのは明らかだ。そこで、1 Day Soonerではそれを最小限に抑える対策が講じられている。


 まず参加できるのは、基礎疾患のない20~45歳のボランティアだけだ。さらに、実際に参加するボランティアは、仮に治験に参加しなかったとしても感染リスクが高い人たちになるだろうという。

 治験が始まれば、参加者は隔離され、コントロールされた環境で常時健康がモニターされる。そしてワクチンが功を奏さず感染が確認されれば、高度な治療が行われる。治験開始までに治療薬が手に入れば、それも提供されることになる。

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Volunteering to get COVID-19 to test vaccines

【世界各国から25000人以上が参加申し込み】

 1 Day Soonerに参加を申し込んだからといって、法的な義務が生じるわけではない。
それでも現時点(5月24日現在)で、102か国から25104人のボランティア志願者たちが登録している。

 ちなみに1 Day Soonerとは、「1日でも早く」という意味だ。統計モデルによれば、ワクチンの完成が1日早まっただけで、7120人の命が救われるという。3ヶ月早めることができれば、60万人の人たちが助かることになる。

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参加希望者は25000人を超える(1 Day Soonerのページスクリーンショット)

 アメリカとイギリスで実施された2種の新型コロナワクチンに関する予備調査では、深刻な副作用なく人体に抗体反応が生じることを示す有望な結果が得られているという。

 これに加えてヒト感染試験が行われれば、ワクチン開発だけでなく、効果のないワクチン候補の除外もスピードアップできると専門家は考えている。


References:1 Day Sooner / goodnewsnetwork

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