ユーカリの葉しか口にしないはずコアラが雨水を飲んでいる姿を初めて確認(オーストラリア)

水分補給をするコアラを初めて確認 image credit:University of Sydney/Facebook
 2019年9月から始まった、オーストラリアで起こった壊滅的な森林火災では、20%の森林が破壊され、多くのコアラを含む10億以上の野生生物に死をもたらした。

 コアラは一般的に、食料であるユーカリの葉から水分補給をするため、めったに直接水は飲まないとされてきた。
森林火災で瀕死の状態となったコアラに人間がペットボトルの水を飲ませるといったニュースも報道されたが、非常事態に限った話である。

 しかし今回、新たなコアラの生態が発表された。木の幹に滴る雨水をコアラが飲んでいる姿が初めて捉えられたのだ。『iflscience』などが伝えている。
【コアラはユーカリの幹につたう雨水を舐めて水分補給していた】

 のんびりとした仕草でユーカリの葉をもぐもぐ食べたり、ぎゅっと木にしがみついたりしているコアラの姿はとても愛らしい。

 コアラの名前の由来は、オーストラリアの先住民族アボリジニの言葉で「水を飲まない」を意味すると言われており、コアラをいじめると干ばつになるという伝承もある。

[画像を見る]
Holgi/pixabay
 だが夜行性のコアラは、大雨の時期にほとんど観察されることがなかったため、研究者たちに知られていない生態を持っていたようだ。

 5月3日の「野生のコアラの日」に発表された、シドニー大学生命環境科学研究科のバレンティナ・メラ博士率いる研究の調査結果によると、普段コアラにとって食べ物や、休養、避難場所として欠かせないユーカリの木が、水分補給にも使用されていたことが明らかになった。

 同大学の研究チームは、2006年~2019年に記録されたコアラの水分補給の観察記録を基に調査。すると、降雨直後にコアラが木の幹を舐める様子が合計44件記録されていた。

 その映像の中には、子供をお腹の袋に入れたメスのコアラが15分以上幹につたう雨水を舐めている姿や、オスのコアラが30分以上水分補給している姿が捉えられていたという。

[動画を見る]

【「新たなコアラの生態発見に興奮」とメラ博士】

 研究発表によれば、野生のコアラは1日あたりユーカリの葉を約510グラム消費し、必要水分摂取量の約75%を葉に含まれる水分から摂取しているそうだ。

 
 今回の研究を主導したメラ博士は、次のように述べている。

長い間、コアラはユーカリの葉を食べることで生きるために必要な水の大部分を得ていると認識していました。

それ以外の水分補給も、コアラには必要ないのだろうと理解していたということもあります。

ですが、今回初めてコアラが木の幹から水を舐めている姿を捉えることができました。

これは、コアラが野生で水を得る方法についての研究者の理解を大きく変えるエキサイティングな観察記録です。新たなコアラの生態がわかって嬉しく思いました。

 同時に、メラ博士は懸念の声もあげている。

この、水を木の幹から舐めるという行為は、コアラが定期的な降雨により自由に水にアクセスできるということを示しています。

そのため、雨水が不足する事態になると、コアラは水分補給する術を失ってしまうということになります。そうなれば、深刻な悪影響をコアラが受ける可能性もあり、私たちは種の保護のためにも、ユーカリの木を保持していく方法を見つけていかなければなりません。

[画像を見る]
dayamay/pixabay
 もともと、コアラは1日の大半を眠って過ごし、水分をあまり摂らない動物とも言われている。

 しかし気候変動の影響で、オーストラリアの一部地域では通常よりも降雨量が減少し、有袋類に脅威を与える可能性があると懸念されている。


 将来のより良い保護を可能にするためにも、猛暑や干ばつ時に有袋動物がどのように適応するかという研究は重要であり、今回のコアラの新たな生態もその1つとして保護に役立つことになるだろう。

written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:ユーカリの葉しか口にしないはずコアラが雨水を飲んでいる姿を初めて確認(オーストラリア) http://karapaia.com/archives/52291545.html
編集部おすすめ