
足が焼けるように痛い奇病 image credit:The New England Journal of Medicine
7月23日、海外の医療ジャーナルサイト『The New England Journal of Medicine』は、24歳の女性が両脚に焼けるような激しい痛みを感じた数日後、歩行が困難になり、脚が変色するという事態に見舞われた記録を発表した。
医師が精密検査を行ったところ、その女性は中世ヨーロッパでよく知られた麦角(ばっかく)菌病と同じ症状を患っていることが明らかになったという。
【灼熱の痛みを脚に感じ来院した女性】
海外に住む24歳の女性は、足のつま先から大腿部の中央まで焼けるような痛みに襲われた。
それが原因で歩くこともままならなくなった女性は、症状が現れて2日後に来院し、医師の診察を受けたが、その時既に女性の両脚はとても冷たく、色が変色していたという。
CT検査の結果、女性の脚は下肢に血液を供給する役割を果たす膝窩動脈と背側中足動脈という2つの動脈の幅が極端に狭くなっていることから血液が凝固し、循環していなかったことがわかった。
[画像を見る]
その後、血液希釈剤を投与する治療を受けた女性は、下肢の血流が増加して症状が緩和。しかし、変色した脚が一部壊疽を起こしていたため、複数の足の指の切断を余儀なくされてしまった。
[画像を見る]
Konevi/pixabay
【麦角菌病に罹っていたことが判明】
医師は、この女性が「麦角菌病」を患っていたと診断した。
日本ではあまり聞き慣れないが、「麦角(ばっかく)菌」病は中世のヨーロッパでは西暦857年に遡って広く知られている病だ。
麦角菌とは、穀類を中心に感染する糸状菌(カビ菌)の一種で様々な種類があるが、中でもC.purpureaと呼ばれる種のそれは、ライ麦をはじめ小麦や大麦、エンバクなどの穀物に感染し、摂取した人に深刻な影響をもたらすことで知られている。
[画像を見る]
2966152/pixabay
中世ヨーロッパでは、麦角菌汚染されたライ麦パンによる麦角中毒が多く、聖アントニウスに祈ると治癒できると信じられてきたことから「聖アントニウスの火」または「聖なる火」の病などとも呼ばれていたという。
【女性の場合、変革中毒による症状だった】
麦角菌は、麦角アルカロイドと呼ばれる物質をつくりだし、これが麦角中毒を引き起こすことによって、循環器系や神経系に対して様々な毒性を示すとされている。
女性が訴えたように、手足が燃えるような感覚となり血管収縮を引き起こす他、手足の壊死を発症。
また、脳の血液が不足することで精神異常やけいれん、意識不明、躁病、子宮収縮からの流産などを引き起こし、最悪の場合は死に至ることもある。
中世から微量の麦角は堕胎や出産後の止血にも用いられたが、現在は麦角成分のエルゴタミンが偏頭痛の治療に用いられている。
[画像を見る]
stevepb/pixabay
女性の場合、症状が発症する数日前から片頭痛の薬を服用していたとのこと。更に、HIVの治療と組み合わせて、体内のエルゴタミンの血中濃度が上昇したことによって今回の症状を発症したということだ。
written by Scarlet / edited by parumo
記事全文はこちら:脚に灼熱の痛みを感じた女性、中世に流行した「麦角菌病」と診断される http://karapaia.com/archives/52293178.html
編集部おすすめ