
image by:太陽系の形 Opher, et al
宇宙の端っこのことを考えると未だに眠れなくなるわけだが、21世紀になっても、我々はまだ宇宙のことをよく知らない。
我々が暮らしている太陽系の形なんて、考えたこともなかったが、NASAが集めた最新データの分析によると、ちょっと疲れ気味の胃のような、しぼんだクロワッサンのような形をしているという。
宇宙って人体に似ているところがあると言われてきたけれど、まさにそんな感じだったのか。
【太陽系を包む泡】
太陽系は「太陽圏(ヘリオスフィア)」という電荷粒子と磁場の泡に包まれている。それはつまりは太陽風が届く範囲のことで、これのおかげで太陽系の惑星は宇宙線や宇宙で生じた現象から放たれるエネルギーから守られている。
内側にいながらにして太陽圏の形状と大きさを計測するのはとても難しいことなのだが、頼もしいことに、私たち人類にはボイジャー1号と2号がいる。1977年に打ち上げられた両機は、それぞれ2012年と2018年に太陽圏を脱出。現在はその外側に広がる恒星間宇宙を旅している。
NASAの研究グループは、両機が届けてくれたデータにくわえ、さらにカッシーニとニュー・ホライズンズからのものもあわせて、太陽圏の特徴を予測した。
これまで太陽圏は、ボールのような本体から長く尾を引いた彗星のような形をしていると考えられてきた。
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これまで考えられてきた太陽圏の形 image by:NASA Scientific Visualization Studio
ところが、最新データから判明した姿とは、NASA曰く「しぼんだクロワッサン」だ。私から言わせてもらえば人間の臓器、胃に近いと思う。
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新たに予測された太陽系の形 Opher, et al
【太陽圏内外で働く冷たい力と熱い力】
このように太陽系がいびつに歪んでいるのは、太陽圏内外で複雑な力が働いているためだ。今回の予測モデルでは、太陽から吹き流れる「太陽風粒子」と、宇宙でイオン化してから太陽風によって拾われた「ピックアップイオン」の2つの力が考慮されている。
これらが複雑に作用し合うことで、太陽圏は従来の予想を裏切り、ねじれた三日月のような形になった。
「非常に冷たい成分と、それよりずっと熱い成分、つまりピックアップイオンがあります」と、主執筆者のメラヴ・オフェル教授は声明の中でコメントする。
冷たい液体と熱い液体を宇宙に流しても、それらは混ざり合いません。大部分は別々のまま変化します。私たちは太陽風の2つの成分を分けたうえで、太陽圏の三次元形状をモデル化しました。
ピックアップイオンはこの熱力学系で支配的なので、おおよそ球状になります。ですが、末端衝撃波面を超えるとそれらは速やかに太陽系を離れるので、太陽圏全体が収縮します
太陽圏は地球の生命を宇宙線から守っている。つまりそれについて理解が深まれば、それだけ他の星系の生命についても知ることができるということだ。
宇宙のどこかにある星でも、クロワッサンのような、あるいは人体の臓器に似た恒星圏が生命を守っている、とでもいうのだろうか?
この研究は『Nature Astronomy』(3月16日付)に掲載された。
A small and round heliosphere suggested by magnetohydrodynamic modelling of pick-up ions | Nature AstronomyReferences:scitechdaily/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1036-0
記事全文はこちら:思ってたのと違う!NASAが太陽系の形を最新データから予測 http://karapaia.com/archives/52293607.html
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