カエルに食べられても、生きたままお尻から脱出する虫が発見される(日本研究)

カエルに食べられてもお尻から脱出できる虫 image by:naturalist2008
 カエルは肉食性で、ほとんどが生きた昆虫などを食べているが、虫の方としてはできれば食べられたくはない。仮に食べられちゃってもまだ生きていたい。


 そんな昆虫のど根性が実を結んだのか、カエルに食べられても生きたままお尻の穴からしれっと脱出できる昆虫の存在が確認されたそうだ。
 
 水生昆虫のマメガムシは、カエルに食べられても93%の確率で、お尻から脱出することが日本の研究でわかったそうだ。
【カエルに飲み込まれてもお尻から脱出できる昆虫】

 捕食者に食べられる運命にある獲物は、なんとか攻撃をかわして逃げおおせられるよう、まずは食べられないようさまざまな工夫をする。

 ところが、捕食者の胃の中に飲み込まれた後でも、その体内からまんまと逃げ出すことができるものがいる。日本の水田などにいるガムシ科の水生甲虫、マメガムシだ。

 マメガムシはトノサマガエルに食べられても、消化管の中を自力で移動して、肛門から脱出できるのだ。

 これは、捕食者の排泄行為任せの受け身的な脱出劇といえば確かにそうだが、研究室で行った実験によると、できるだけ早く脱出するために、マメガムシがカエルの排泄を促しているらしいこともわかった。

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A beetle species can escape from the vent of a frog / マメガムシはカエルに食べられてもお尻の穴から生きて脱出できる

【カエルに捕食されたマメガムシを観察】

 カエルはたいてい歯がないため、獲物は生きたまま丸ごと飲み込まれ、消化はおもに消化器官の中で行われる。杉浦氏は、食われてしまう昆虫のカエルに対する防衛力を調べるために、トノサマガエルにマメガムシを何度か与えて観察してみた。

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 両者とも日本の水田などで普通に見られ、マメガムシはカエルの格好のエサだ。体長3.8~5ミリのマメガムシの成虫を、トノサマガエル(口吻から肛門までの長さは22.5~74.2ミリ)に与えると、カエルはマメガムシをひと飲みにした。

 ところが、飲み込まれたはずのマメガムシの93.3%が、捕食されてから6時間以内にカエルの肛門から出てきた。
しかも驚いたことに、出てきたマメガムシすべてが生きていたのだ。

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【マメガムシは足でカエルの腸を刺激し、排泄を促していた】

 トノサマガエルは、獲物を飲み込んでから未消化の部分を排泄するのに、だいたい24時間かかる。それが、6時間という驚異的な早さで出てきたということは、マメガムシがカエルの消化活動にただ身を委ねるのではなく、自ら積極的に動いて消化管の中を肛門へと必死にたどり着いたということになる。

 しかし、カエルの括約筋は固く締まっており、排泄のために開かない限り、小さな甲虫がそこから自力で抜け出すことは不可能だ。

 だから、マメガムシはカエルの腸をなんらかの方法で刺激して、排泄を促しているのではないかと思われる。ダルマガエル、ツチガエル、ヌマガエル、ニホンアマガエルなど、異なる種類の捕食者で実験してみても、同じ状況が観察された。

 ちなみにマメガムシの足を動けないようにして捕食させたところ、生還したものはなかったという。つまり、彼らは足を使って、消化管の間を移動しているということになる。

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image by:R. attenuata escaping from a black-spotted pond frog. (Sugiura, Current Biology, 2020)
【マメガムシの生き残り戦略】

 カエルの消化管の中は、極端な酸性で無酸素状態という過酷な環境のはずなのに、マメガムシはその中で生きたまま通過できる身体的な適応力もあるようだ。

 捕食された後に毒性のものを放出して捕食者に吐き出させ、生還する昆虫もいる。しかし、捕食者の食道、胃、小腸、大腸を自分の意思で前進して、腸の蠕動(ぜんどう)運動をただ待つのではなく、自ら出口に急ぐマメガムシの行為は、能動的脱出行為の最たるものといえるのではないか。

 とはいえ、謎はまだたくさんある。
捕食者の肛門にたどり着くために、マメガムシはカエルの腹の中で実際にどんなことをやっているのか?

 ガムシの仲間で、同じような脱出劇をやってのけるものは、ほかにもいるのだろうか? 答えは、いずれわかるかもしれない。

 もしかしたらマメガムシが、便秘に悩む人類を救うことになるかもしれないが、それはまた別の話となるだろう。

この研究は、この8月3日に『Current Biology』誌に発表された。
Active escape of prey from predator vent
via the digestive tract: Current Biology

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(20)30842-3
References:phys/ written by konohazuku / edited by parumo

記事全文はこちら:カエルに食べられても、生きたままお尻から脱出する虫が発見される(日本研究) http://karapaia.com/archives/52294360.html
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