
雄叫びと実際の強さの関係を調査 /iStock
あなたは今、総合格闘技の試合を観戦にきている。リングに上がった選手は筋肉隆々で、眼光鋭くイカつい顔つきだ。
さらに、「グォォォオオー!」と五臓六腑を揺るがす大きな雄叫びまで上げている。こいつは確かに強そうだ。
だが、『Frontiers in Psychology』(2019年4月30日付)に掲載された、雄叫びから格闘家の強さを推測しようとした研究では、少々意外な結果になってしまったようだ。
強そうな雄叫びをあげていた格闘家が必ずしも強いとは限らなかったのだ。
【雄叫びによって決着をつける熱き男たち】
自然界において、メスを巡るオス同士の争いは、しばしば雄叫びのディスプレイの応酬になる。
そしてアカシカやヒヒの研究からは、そうした雄叫びが実際にそのオスの戦闘能力を示すものであることが証明されている。
また人間を対象としたものでも、声から上半身の強さを推測することができると示唆した研究がある。
そこでプラハ・カレル大学(チェコ)の研究グループは、総合格闘家の強さをその雄叫びや話し声から判断できないか試してみることにした。
【男性格闘家に雄叫びで思いっきり威嚇してもらう実験】
研究の対象となったのは、アマチュアの総合格闘技欧州選手権に出場した19歳から33歳の男性格闘家40名だ。
彼らが数える10カウント(短い発声として)と、「相手を思いっきり威嚇」するために放たれた3度の雄叫びを録音。
このときの雄叫びを約60名の男女に聴いてもらい、どのくらい強そうに感じたか評価してもらった。
さらに、各選手の身体能力を把握するために、身長・体重・体脂肪率・筋肉量・握力・肺活量といった身体測定も行われた。
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【音程の変化や声の大きさが強そうに思わせる秘訣】
ここから判明したのは、声を聴いて強そうだと思わせる秘訣が音程の変化と大きさにあるということだ。
短い発声ならばその最中に音程が低くなる、雄叫びならばその反対に音程が高くなると、それを聴いた人に強そうだという印象を与えることができた。
またどちらの場合も、音量が大きければ、強そうだという評価が与えられた。
【強そうな雄叫びと実際の強さに関係性は見られず】
ところが、それ以外の部分では、研究グループが過去の研究に基づいて予想した内容を裏切る結果になっている。
たとえば、雄叫びから強そうだと評価された格闘家であっても、特に勝率が高いわけではなかった。
さらに身長・体重・筋肉量といった身体データから強いだろうと判断された格闘家であっても、必ずしもその声を聞く人に強そうだという印象を与えることはできなかった。
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【雄叫びに魂を宿らせるには敵が必要?】
こうした意外な結果になった理由ついて、実際の敵を目の前にした雄叫びではなく、研究者に頼まれて発した雄叫びだからではないかと研究グループは考察している。
相手を威嚇するための叫び声は、意識的に完全にコントロールできるものではなく、実際に戦いが迫っているなどの条件が必要なのかもしれないそうだ。
このことは人間の発声機能の複雑さを示すもので、非言語的な発声についてさらに調査を進める必要があるとのことだ。
Frontiers | Roar of a Champion: Loudness and Voice Pitch Predict Perceived Fighting Ability but Not Success in MMA Fighters | PsychologyReferences:psypost/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2019.00859/full
記事全文はこちら:強そうな雄叫びをあげる格闘家は実際に強いのか?検証してみた(チェコ研究 http://karapaia.com/archives/52294419.html
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