地上絵「サーンアバスの巨人」の改ざんに歴史的建築物保護団体が怒り心頭

地上絵改ざんに非難の声 image by:ancient-origins
 イギリスの丘陵地帯に描かれたヒルフィギュアと呼ばれる地上絵の一つ、「サーンアバスの巨人」を、AmazonのPRチームが、新作映画のプロモーションのために改ざんした。

 歴史的建築物の保護を行っているボランティア団体、ナショナルトラストは、イギリスの象徴的なモニュメントを故意に"汚した"として怒りをあらわにしている。
【地上絵、サーンアバスの巨人を映画プロモーション用に改ざん】

 問題の「サーンアバスの巨人」は、イギリス、ドーセット州サーンアバス村近くの丘に描かれた全長55メートルの巨人像。立派な一物をもつ男性の裸像で、右手に大きな棍棒を持っている。像の輪郭は浅い溝になっていて、チョーク質の瓦礫で埋められている。

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サーンアバスの巨人 Cerne Abbas Giant

 ナショナルトラストが管理しているこの巨人像は、古代ケルトの豊穣の神だと言われていて、不妊に悩む女性に子どもを授ける力をもつという。

 しかし、歴史家や考古学者によると、この巨人のことが初めて記述されたのは1694年なので、描かれたのは17世紀に違いないという。

 いずれにしても、巨人像はイギリス遺産の大切なモニュメントで、それをAmazonが勝手に改ざんしたことが、このたびナショナルトラスの怒りをかった理由だ。

 どのように改ざんしたかというと、巨人の股間に巨大なマスクを配置し、"マスクをして、命を大切にしよう"の文字を配置したのだ。

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image by:ancient-origins
 実はこれ、マスクではなく、2006年のコメディ映画『ボラット』で、イギリスのコメディアン、サシャ・バロン・コーエンが身に着けたマンキニ(露出過多の男性用ビキニ)。

 この新作映画をPRするために、Amazonのプロデューサーが仕掛けたと考えられている。だが、ナショナルトラストの広報は、"誰にもこんな改ざんを許可していない"とし、保護団体も、有名な「サーンアバスの巨人」にこんなハレンチな格好をさせたとして非難した。

 このPR活動は、新しい『ボラット』シリーズがアマゾン・プライムビデオで放映され始めた時期に始まった。

 サシャ・バロン・コーエンが、マンキニだけを身に着けた格好で登場し、それを昨今のコロナ過に合わせたマスクに見立て、イギリスのモニュメントに"はかせた"ようだ。



 そのほかにも、ボラットの巨大な風船をテムズ川の上空で飛ばしたり、エジンバラ城や、アーサーの腰かけ(ホーリールード公園にある噴火口跡の岩)、ロンドン塔、ニューカッスルのエンジェル・オブ・ザ・ノース(イングランド北部にある彫刻作品)などの有名どころにもマンキニマスクがかけられた。


 しかし、サーンアバスの巨人を保護・管理しているナショナルトラストは、そうした改ざんの許可を許した覚えはないと相当おかんむりだ。

【歴史的建造物の改ざんに管理者は怒り心頭】

 「サーンアバスの巨人」は、1920年にナショナルトラストが管理することになった。彼らは、「サーンアバスの巨人に手を加えることは許していません。誰かが実際にモニュメントになにかをとりつける、なにかをつけている印象を与える、いずれにしても、このような行為は、脆く崩れやすい現場に損害を与える可能性があるからです」と語る。

 さらに、巨人の輪郭を描くのに使われているチョーク材は、10年毎に丁寧にとりかえられている。現場が荒らされれば、モニュメントがどんどん蝕まれることになる。

 「サーンアバスの巨人」は、指定古代モニュメントに分類されていて、科学的に特別に重要な場所である、野の花、蝶、その他の野生生物がたくさん生息するチョーク質の草原にある。

 このたびリリースされた『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ賄賂計画』は、2006年の『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』の続編だ。

 だが今回の作品は、コーエンがいつもジョークのターゲットにする有名人ではなく、一般のアメリカ人を対象にしているとして批判された。

References:ancient-origins / metro / dorsetecho/ written by konohazuku / edited by parumo

記事全文はこちら:地上絵「サーンアバスの巨人」の改ざんに歴史的建築物保護団体が怒り心頭 http://karapaia.com/archives/52296215.html
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