海のパンダみたい。現在わずか10頭未満の絶滅危惧種「コガシラネズミイルカ」(メキシコ)

絶滅間近のコガシラネズミイルカ image credit: youtube
 スペイン語で「小さな牛」を意味するVaquita(ヴァキータ)は、日本ではコガシラネズミイルカと呼ばれており、メキシコ本土とバハ・カリフォルニア半島とを隔てるカリフォルニア湾北部にのみ生息している世界最小の海洋哺乳類だ。

 目の周りが黒丸で縁取られているのが特徴で海のパンダのような、アニメキャラのようなかわいさだが、コガシラネズミイルカは間もなく絶滅すると言われている。事実、2020年の時点でその数はわずか10頭未満とされているからだ。

 長年にわたるトトアバ漁の混獲により、年々急激に個体数が減少。保護団体が必死で絶滅を防ぐために日々尽力中だが、その見通しは暗いという。『twistedsifter』などが伝えている。
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VANISHING VAQUITAS: Vaquita dolphins being pushed to brink of extinction by greedy fishermen

【世界最小のコガシラネズミイルカ、個体数はわずか10頭未満に】

 メキシコのカリフォルニア湾北部に分布するヴァキータ、日本名コガシラネズミイルカは、2011年以来その生存数が9割以上も激減している、世界で最も絶滅の危機に瀕しているネズミイルカ科ネズミイルカ属だ。


 個体数が減少する主な原因は、違法なトトアバ密猟の際に誤って捕獲されたり、刺し網にかかって死亡するケースが増えたためだ。

 ニベ科の高級魚、トトアバの浮袋は「海のコカイン」と称され、中華料理の高級食材または循環器系などに薬効があるとして、漢方薬の素材としても珍重されていることから、メキシコのマフィアが高値で中国マフィアに売るという密猟により、闇市ではコカインより高値で1kg2万~8万ドル(約210万円~830万円)で取引されているという。

 トトアバの体長は、最大全長148センチのコガシラネズミイルカとよく似ており、同じ海域に生息している。どちらも絶滅危惧種である。

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写真上がトトアバで下がコガラシネズミイルカ image credit: youtube
 この事態を重く見たメキシコとアメリカ政府は、2015年にトトアバ漁の刺し網漁禁止措置を出したが、当初の期間は2年のみであり、以降も密猟は絶えなかった。

 そこで、米俳優レオナルド・ディカプリオを含む多くの環境活動家らがこの措置の延長をメキシコのエンリケ・ペニャ・ニエト大統領に訴える運動を起こし、結果的に措置の延長と最終的にはそれを恒久化することが発表された。


 だが混獲の果てに、コガシラネズミイルカは2014年には60頭までに個体数が激減。その後、2017年には30頭のみ、去年は15頭が確認され、今年はわずか10頭未満しか生存していないことが判明している。

 メキシコとカリフォルニア州の自然保護団体は、コガシラネズミイルカの絶滅をなんとか防ごうと日々尽力しているが、見通しは暗い。

 
【絶滅寸前のコガシラネズミイルカのための映画も公開】

 去年9月、この絶滅寸前の海洋生物の危機を知ってもらおうと、環境活動家らの保護活動に焦点を当てた映画『Sea of Shadows』が公開された。

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 わずか10頭未満というコガラシネズミイルカの長期保全計画には、現地社会の協力が必要不可欠であり、何頭かを捕獲してより安全な水域にいったん避難させた後、密猟その他の危険がいずれ排除された時点でもとの水域に戻すという計画が立てられているが、そうした保護団体らの懸命の活動も、コガシラネズミイルカが滅多に人前に姿を現さないこともあり、なかなか思うように進んでいない。

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 数年前には、VauitaCPRが保護した生後6か月と推定される1頭のコガシラネズミイルカは、救助されたことでかなりストレスを感じてしまったようだ。一旦保護し水に放したものの、2頭目は保護した数時間後に死んでしまったという。

 保護活動家の1人は、メディアの取材でこのように語った。

必死の思いで絶滅を食い止めようと保護活動に従事している最中に死んでしまい、その悲しみは言葉にすることもできませんでした。

 バキータの回復に関する国際委員会 (CIRVA)は、「時間との闘いともいえる極端な現状の中で既存の保全対策と禁止令を実施しているが、状況は既に絶望的だ。違法の刺し網漁による死亡率をなくして個体群の減少を阻止しない限り、ヴァキータは数年後には絶滅するだろう」と報告している。

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The race to save the last of the Vaquita l Nightline

written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:海のパンダみたい。現在わずか10頭未満の絶滅危惧種「コガシラネズミイルカ」(メキシコ) http://karapaia.com/archives/52296277.html
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