音楽を聴いた時のゾクゾク感と鳥肌の謎を解明 / Pixabay
音楽を聴くと全身を貫くようなゾクゾクした感覚を味わうことがある。それにより鳥肌が立つこともある。
これは一体どのような仕組みでそのような感覚が生じているのか? これもまた興味の尽きない疑問だが、全員に起きるわけでもなく、そもそもそのような感覚を味わうようになった理由もまた興味深い謎だ。
新たなる研究でその謎が解明されたようだ。フランス・ブルゴーニュ・フランシュ=コンテ大学をはじめとする研究グループによると、このゾクゾク感は脳の報酬系と関連しており、私たちの祖先の生存率を高めた原型機能とつながっている可能性があるのだそうだ。
【音楽を聴いてゾクゾクしたとき、脳では何が起きているか?】
音楽と快感に関する過去の研究では、神経伝達物質の分析やfMRIによる観察を通じて、2つのプロセスによって音楽による快感が生じていることを明らかにしている。
たとえば2011年の研究では、音楽を聴いてまず「期待」の段階があり、それから神経伝達物質が「放出」されると報告している。つまり音楽を聴いて感情の高まりがピークに達したとき、ドーパミンが放出され、ゾクゾク感を味わうのだ。
『Frontiers in Neuroscience』(11月3日付)に掲載された最新の研究では、EEGで音楽を聴いているときの脳内の電気活動が測定された。その狙いは、音楽と快感を結びつけていると考えられる電気活動の変化を観察することだ。
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【シータ波が増幅するとゾクゾク感を感じる】
この実験の参加者は18人(うち8名はアマチュア音楽家)。彼ら自身が事前に選んだゾクゾク感をよく感じる曲と、研究グループが選んだ中立的な曲を目を閉じたまま聴いてもらい、そのときの脳内活動がモニタリングされた。
音楽鑑賞中、参加者がゾクゾク感を感じた平均回数は16.9回。それぞれのゾクゾク感の持続時間は平均8.75秒ほど。
そしてこのとき脳の中では、感情処理を担う「眼窩前頭皮質」において「シータ波」(入眠時や瞑想中に観測される脳波)の増幅が確認。その強さはゾクゾク感や感情の大きさと相関していたという。
さらに「補足運動野」(体の運動に関連)と「右側頭葉」(音楽のような非言語コミュニケーションの解釈に関連)でも、同じようなパターンが観察されたそうだ。
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音楽を聴いてゾクゾクした時に活性化される脳の領域 image by:Frontiers in Neuroscience
【ゾクゾク感はドーパミンと関係】
研究グループによると、シータ波の増幅は、脳内でドーパミンが蓄積し、やがて放出されるという報酬系の活動を示しているのだという。
脳内麻薬とも呼ばれる神経伝達物質「ドーパミン」は、「報酬系」に関係しており、意欲や動機などを呼び起こす重要な役割をはたしている。
食事や性行為のような行為によって快感が得られるのは、それを行うことで生存する確率や子孫を残す確率が高くなるからだ。
だから、脳は報酬系を活性化させて快感を感じさせ、その行為を繰り返し行うよう促している。
音楽によって報酬系が刺激されているということは、ドーパミンを放出させる生存にかかわる行動に似ているということだ。そして、この類似こそが音楽を聴くとゾクゾクする謎を解くヒントになる。
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【祖先の生存率を高めた原型機能】
研究グループのThibault Chabin氏は、音楽にもほかの快感を感じられる行動と同じような進化上の理由がある可能性があると説明している。
いくら報酬系が刺激されるとはいえ、音楽の場合、生存率を高めるような直接的なメリットはないように思われる。だが、音楽には別の「原型機能」があったのかもしれないのだそうだ。
たとえばそれは、ゾクゾク感へいたるまでの「期待段階」と関係しているかもしれない。シータ波は記憶作業の成功(これも報酬として感じられる)と関連していることが知られている。このことから、ゾクゾク感は報酬を手に入れられそうだということを理解させる1つの手段とも考えられるという。
あるいは音楽によってコミュニティの絆が育まれることから、社会性に根ざした生物学的な適応なのではないかとも推測されている。
ほかの基本的な快感と同じように、音楽の快感もまた報酬系の活性化から生じている。いい音楽を聴いても腹の足しになるわけではないが、そこには脳をくすぐる何かがあることは間違いないようだ。
References:inverse/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:音楽を聴いた時のゾクゾク感と鳥肌の理由が解明される http://karapaia.com/archives/52296359.html