長期間、独房に閉じ込められると人はどうなるのか?

独房に長期間閉じ込められると人はどうなる?/iStock
 今コロナ禍のせいで、人と人の交流は大きく制限されている。好きな人に思うように会うことができず、誰しも大なり小なり孤独を感じていることだろう。


 だが世の中には、ウイルスが大流行する以前から、ずっと極端な形で孤独を強制される場所がある。それは刑務所にある独房だ。

 独房に入れられた受刑者は、人との接触が禁じられ、娯楽は許されず、太陽の光さえも奪われる。ほとんど刺激のない狭い部屋に閉じ込められた状況は、経験者に言わせればこの世の地獄であるという。孤独を好むタイプの人間ですらこれには耐えられないかもしれない。
【感覚が遮断され、気が狂いそうになる】

 元受刑者のFive Mualimm-Ak氏は、12年間の服役期間中、じつに5年を独房で過ごしたと動画の中で告白している。

 「一人きりで座って、時間のことを気にし始めたら、気が狂ってしまう」とMualimm-Ak氏。

 愛する家族や友人のことを考えたりするが、考えたところでどうにもならない。やがてそうしたことから気を紛らわせようと、石鹸で人形を作ったりする――。その苦しさは味わった者にしか分からないと語る。

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What Happens When You Spend Weeks, Months, or Even Years in Solitary Confinement

【まず感覚が遮断される】

 独房に入るとまず感覚が遮断される。音は聞こえないし、周囲の風景は常に同じ。
体を動かすこともほとんどできない。

 また他人から受け入れられることもない。食事や水、医療品や生活に必要なサービスを与えてくれる唯一の他人は、独居房の受刑者を無視するよう訓練された刑務官だ。

 Mualimm-Ak氏の友人でやはり元受刑者のTerrence Slater氏は、1年間の独房で、体がすっかり衰弱してしまったという。独り言をいうのにも疲れ果てているほどで、やがて頭の中で自分に語りかけるようになったそうだ。

 Slater氏によると、独房と独房は斜向かいになるように設置されている。これは他の受刑者と会話ができないようにするための意図的なものだ。だから受刑者たちはドアの端から斜め向かいにいる相手に向かって呼びかけるのだという。

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【独房は必要悪か?】

 アメリカの場合、受刑者はちょっとしたいざこざで独房に入れられる。Mualimm-Ak氏は配膳係をやっていたとき、食事を盛りすぎたことを咎められ、これがきっかけで独房に入れられた。

 それも最初は90日の予定だったのが、ほかの受刑者と雑誌のやりとりをしていることが見つかってしまい、さらに90日間延長された。

 刑務所側は独房は必要悪だと主張する。
ルールに従おうとしない受刑者をきちんと従わせるには、そのような罰則が必要なのだと。

 しかし独房での監禁は、現在の刑罰システムにおいてもっとも極端な罰則であり、刑務官が一方的にその適用を判断するのは妥当ではないという意見もある。

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Solitary Confinement Project: The Last 4 Hours

【孤独によって心と体が蝕まれる】

 独房は健康を大きく害するほどに過酷だ。さらに出所した後の再収監率が高いというデータもある。

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 長期間の独房生活は、脳の機能さえ変えてしまうという。おかげで他人の顔を認識できなくなったり、ちょっと指示にも従えなくなったりする。これは独房にいると、そうした認知機能がまったく使われず、衰えてしまうことが原因だ。

 Slater氏は、独房では自分という感覚がなくなってくると語っている。新しい刺激がないために新しい思い出ができることもなく、やがて短期記憶障害が起こり始めるのだ。

 Mualimm-Ak氏は、人混みが恐ろしくなったと話す。独房のおかげでずっと自分のパーソナルスペースが守られていたので、突然それが侵されるようになって、他人とのちょっとした接触にも圧倒されたのだそうだ。

 今アメリカでは年間およそ8万人の受刑者が独房に閉じ込められている推定されている。


References:openculture/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:長期間、独房に閉じ込められると人はどうなるのか? http://karapaia.com/archives/52296848.html
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