16世紀のヨーロッパってどんな臭い? AIでその臭いを再現


 16世紀のヨーロッパの街中をぶらぶらと散策してみたら、どんな香りが漂ってくるだろうか? 一説によるととにかく悪臭がひどかったそうだが、臭いものほど嗅ぎたくなるものだ。

 今、研究者はAIを利用して、400年前のヨーロッパ人の嗅覚を刺激していただろう”臭いの風景”を再現しようとしている。 

 オランダ王立芸術科学アカデミーと英アングリア・ラスキン大学が中心となり、3年がかりで進めている研究プロジェクト「Odeuropa」では、歴史家・科学者・AI技術者といったヨーロッパ中の研究者がチームを組んで、16世紀から20世紀までのヨーロッパの街並みを満たしていたであろう、過去の臭いの再現を目指す。

 「1500年以降にヨーロッパで出版された印刷物を調べてみれば、お香のような宗教的な香りから、タバコのようなものまで、臭いに関する記述がたくさんあることに気づくでしょう」と、アングリア・ラスキン大学のウィリアム・タレット博士は語る。

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Odeuropa rediscovers European scents

【AIで文献や絵画を分析】

 研究対象となるのは、ペストの予防薬として利用されたローズマリーのような香草から、18~19世紀に利用されたてんかんや失神の気付け薬など、ありとあらゆる臭いだ。

 プロジェクトの最初のステップは、臭いについて説明している7言語の歴史的文献や、絵画などに描かれている臭いの素を見つけるAIを開発することだ。

 AIによって、文献や絵画などの臭いの記述を分析。そのデータをもとに、歴史的な臭いのオンライン辞典を編纂し、さらに調香師や化学者らが当時の臭いの再現を試みる。

 そうした過去の臭いは、博物館や遺跡の臨場感を増す演出としても利用可能であるそうだ。

トバイアス・スモレット著『ロデリック・ランデムの冒険』の一場面を描いたトマス・ローランドソン作(1793年)のエッチング。

ジャマイカに停泊中、近寄ってきた軍医の容姿と臭いのあまり、ウィッフル船長は卒倒してしまう。召使たちが軍医を追い出しつつ、気付け薬を用意し、床にラベンダーの香水をまいている。

【時代とともに変遷する臭いの受け止められ方】

 プロジェクトの目玉の1つは、さまざまな臭いの意味や用途が時代によってどのように変化したのか解き明かすことだ。

 たとえば、これまでに発見された臭いの中で一番有名なものに、タバコの臭いがある。タバコは16世紀にヨーロッパに持ち込まれて以来、すぐにヨーロッパ人を魅了したようで、たちまち街の臭いの一部になった。

 しかし18世紀になると、あまりにもその臭いが充満しすぎたことから、劇場などで苦情が訴えられるようになる。そして今ではヨーロッパだけでなく、世界中からその臭いが消えようとしている。

References:nerdist/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:16世紀のヨーロッパってどんな臭い? AIでその臭いを再現 http://karapaia.com/archives/52297257.html
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