1枚の写真から人物の居場所を探す。超絶難易度の高いゲーム「さとしを探せ!」が14年の月日を経てついにクリア

1枚の写真から1人の人物を探す「さとしを探せ!」14年後にようやくクリア/iStock
 全ての人は6ステップ以内でつながっていて、友達の友達の友達...を介して世界中の人々と間接的な知り合いになることができるという説がある。これは「六次の隔たり」と呼ばれていて、6人の伝い手を頼れば、憧れのあのアーティストや大物政治家と連絡が取れるということだ。

 2006年、この「六次の隔たり」にインスピレーションを受けて、ある代替現実ゲームが企画された。その超絶難易度の高いゲーム「サトシを探せ!」が、14年ごしについにクリアされたそうだ。

 では、ルール説明を踏まえてクリアまでの軌跡を見ていこう。
【代替現実ゲーム「サトシを探せ!」】

 ネットやテレビ、雑誌やポスターなどから提供される情報をつなぎ合わせることで、仮想と現実が交錯する奇妙な体験をもたらす一風変わったゲームを「代替現実ゲーム」という。

 2006年7月31日、英国のマインド・キャンディというゲーム会社が「パープレクス・シティ」という代替現実ゲームを企画した。カードに書かれているクイズを、与えられたヒントをもとにクリアするという内容だ。

 その中の1枚、「10億人の中の1人(Billion to One)」と題されたカードには、サトシと称される男性の写真と「私を見つけなさい」というメッセージが添えられていた。

 クリアするには、サトシ本人に連絡し、彼からパスワードを教えてもらわねばならない。

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【撮影場所はフランスであることが明らかに】

 ゲームが開始された2006年の11月、プレイヤーの1人だったローラ・E・ホールさんは、サトシに関する情報共有の場として、FindSatoshi.comというサイトを開設した。

 すると、この写真が撮影された場所がフランスのアルザス地方、ケゼルスベールであることがすぐに判明した。

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 ホールさんは2007年12月に、出張でこの場所に立ち寄ることができたので、サトシが撮影した場所と同じ場所で自撮り写真を撮影する。

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【その後の捜索は難航】

 しかし、その後の捜索は思うように進まなまったという。ホールさんはサトシについてさまざまな情報提供を受けたが、どれも彼を特定するにはいたらなかった。

 あるとき、彼がロサンゼルスにいるらしいことを示唆する有力なメールを受け取った。そこでいくつか質問をしてみたが、メールの送り主からの返信はなかった(後年、送り主と連絡が取れたそうだが、やはりサトシの正体は不明だった)。

 ホールさんはガーディアン紙など、数々のメディアを使って情報提供を呼びかけたが有力な情報は得られなかった。

 マインド・キャンディ社はそこで追加のヒントを出した。「サトシは協力者である」「ネットで情報提供を求めても本人は関知しない。彼に直接連絡を取らなければならない」「彼に連絡が取れればパスワードを教えてくれる」

【2020年、顔認証AIが突破口を開く】

 しかし2018年にポッドキャストの某企画、2020年にYouTubeの某チャンネルが、ホールさんにインタビューをしたことがきっかけで、「サトシを探せ!」はネット掲示板RedditやDiscordのユーザーから注目を集めることになる。

 事態が急展開したのは2020年12月のことだ。ドイツ在住のRedditユーザーが顔認AIを使ってみたところ、2018年にネットに投稿された1枚の写真にサトシそっくりな男性が写っていることを発見したのだ。

 それは日本の企業のブログに掲載された駐車場で撮影した集合写真らしきもので、片手に持ったビールを掲げる男性のソバカスは、完全にサトシのものと一致していた。ここからサトシは日本の長野県にいるらしいことが明らかになった。

 しかし、ゲームをクリアするためには本人と直接連絡を取らなければならない。だがそれもサトシが勤めている会社のサイトで見つかった。彼のメールアドレスだ。

 ホールさんは日本人の友人に手伝ってもらい、サトシ宛に英語と日本語のメッセージを送信。その翌日に届いた返信にはこんなメッセージが記載されていた。

こんにちは、連絡ありがとう。サトシという人を探しているんですってね。私がサトシです……そう! 私があなたが探しているサトシですよ!!

 ホールさんがサトシ発見をツイート


【14年を経てついにゲームクリア。だが本人も忘れていた】

 サトシさんの返信によるなら、彼はすでにこのゲームのことを完全に忘れていたそうだ。ゲームの制作に彼はほとんど関与しておらず、アメリカの友人に頼まれて、旅行中に撮影した写真を1枚提供しただけだったとのこと。

 サトシという日本では非常に一般的な名前だけを手がかりに自分を探し出したことに驚愕しつつ、クリアを祝福するメッセージでその返信は結ばれている。

 ちなみにパープレクス・シティは2008年にすでに運営が停止しているが、マインド・キャンディ社はホールさんの快挙を認定し、14年ごしのゲームは無事に幕を閉じることになった。

 サトシさんを探すにあたり、かなり大勢の人が動いたようで「六次の隔たり」の説が実証されているのかどうかはわからないが、結果的には、14年も探し続けるというその「諦めない力」が実を結んだのかもしれない。


References:Find Satoshi | A Six Degrees of Separation puzzle. Is it possible to locate a man given only his photograph and first name?/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:1枚の写真から人物の居場所を探す。超絶難易度の高いゲーム「さとしを探せ!」が14年の月日を経てついにクリア https://karapaia.com/archives/52298759.html
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