
米コロンビア大学をはじめとする科学者によると、宇宙人はブラックホールからエネルギーを吸収している可能性があるという。
この技術が事象の地平面の外側になんらかの痕跡を残していたとしてもおかしくはなく、それを検出できれば宇宙人の存在を証明できるかもしれないそうだ。
【ブラックホールにゴミを落としてエネルギーを抽出】
もし宇宙人がブラックホールのエネルギーを利用できるのだとしたら、同じことを人類もできるはずだ。そのためのアイデアなら、すでにいくつか提唱されている。
もっとも有名なのは、ブラックホールの研究で2020年にノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ペンローズのものだろう。
1969年に発表された「ペンローズ過程」では、まず容器にゴミを入れて、自転するブラックホールの「エルゴ球」と「事象の地平面」の間に落とす。それからどうにかして容器だけを回収すると、ゴミの質量とブラックホールの減少した質量に相当するエネルギーを抽出することができると説明されている。
事象の地平面は、ブラックホールの重力が高まり、光すら脱出不能になる境界のことだ。その周囲の時空は、ブラックホールの自転によってまるで渦のように引きずられている――これが「エルゴ球」だ。
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この空間の引きずりによって、エルゴ球に落ちたゴミと容器は負のエネルギーを帯びる。このときゴミだけを事象の地平面に落とし容器を回収すると、これによってブラックホールが失った角運動量に対応するエネルギーを取り出すことができるのだという。
【降着円盤の巨大なプラズマを利用】
ペンローズの思考実験はゴミで行われたが、『Physical Review D』(1月13日付)に掲載された研究では、ブラックホールの周囲をかこむ「降着円盤」の中で生じた巨大なプラズマで同じことができないか考察されている。
そのプラズマには膨大な量の粒子が含まれているので、これでペンローズ過程を行えば膨大な量のエネルギーを取り出せるだろうというのだ。
恒星の表面では、強力な磁場線がもつれたり、解けたりを繰り返す「磁場再結合」という現象がよく観察される。
ここでは膨大なエネルギーがプラズマ・フレアという形で放出されている。そうしたプラズマ・フレアは恒星へまた落下するか、あるいは宇宙へと脱出していく。
一方、今回の研究グループによると、ブラックホールの事象の地平面の外側でも磁場再結合が起きており、これによってプラズマが発生しているのだという。
そのプラズマがエルゴ球に落下すると負のエネルギーが蓄積され、それに対応する外へ脱出するプラズマにはゴミの容器のようにブラックホールのエネルギーが蓄積される。これを取り出せば、ブラックホールの無尽蔵のエネルギーを利用できるようになる。
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【過去の研究とは別の見解】
なお1977年には、自転するブラックホールのそばにある磁場は再結合されず、そのかわりに脱出するプラズマの角運動が増加するという説が、ロジャー・ブランドフォードらによって発表されたことがある。
今回の研究は、この理論とは異なる見解を示している。一体どちらが正しいのか? それを知るには今後の検証を待たねばならないようだ。
References:PHYSICAL REVIEW D / livescience/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:宇宙人はブラックホールからエネルギーを吸収している可能性。彼らを見つける鍵になるか(米・チリ共同研究) https://karapaia.com/archives/52298883.html
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