地球最古の生命体「ストロマトライト」 ごくわずかに現存する生きた個体を発見(タスマニア)

地球最古の生命体、ストロマトライト/iStock
 地球最古の生命体は、藍藻類と堆積物が何層にも積み重なって形成された「ストロマトライト」と呼ばれるものだ。

 徐々にドーム型に成長していくストロマトライトは、内部の断面が層状になっており、少なくとも35億年前に地球上に現れたと言われている。


 ストロマトライトの化石は至るところで見つかっているが、現生のものはごくわずかだ。数年前、タスマニアで生きたストラマライトが偶然に発見されたことは、研究者に驚きと喜びをもたらした。
【地球最古の生命体、ストロマトライト】

 ストロマトライトは生きた化石であり、地球上で最も古い生命体だ。その名前はギリシャ語で層状を意味する「stroma(ストロマ)」と、「岩」を意味する「lithos(リトス)」に由来する。

 この「層状の岩」は藍藻類と堆積物が何層にも積み重なって形成されている生きた岩なのである。

 砂や泥の表面に定着した藍藻類が日中に光合成を行い、夜間になると藍藻類は堆積物を粘液で固定する。更に藍藻類は呼吸するために上部へ分裂していき、翌日には再び光合成を始める。この繰り返しでストロマトライトは徐々にドーム型に成長していくが、成長速度は非常に遅く、1年に数mm程度しか成長しない。

[画像を見る]
iStock
 その起源は古く、諸説あるが約35億年前から存在したと言われている。

 先カンブリア時代になると、地球上のいたるところに存在し、地球に大量の酸素を提供し、同時に大量の二酸化炭素の消費することで、温室効果を減少させ気温を下げたと言われている。

[画像を見る]
iStock
 そのほとんどは化石の状態で発見されているが、ごくわずかながら、未だ生存しているストロマトライトもある。

 オーストラリアのシャーク湾やメキシコのクアトロシエネガスなど、砂漠に囲まれた閉鎖的な海域で、塩分濃度が高い区域には、他の生物がほとんど生存できないため、現在も生き続け、成長を続けているそうだ。


[画像を見る]
iStock
【偶然発見された生きたストロマトライト】

 2015年、タスマニアの淡水湿原で生きているストロマトライトが見つかったとき、研究者たちは驚きを隠せなかった。

 最大でも直径10センチ程度のこの黄緑色の丸い生き物は、タスマニア南西部ギブリン川渓谷の湿った多孔質の岩の上で繁殖していた。

 タスマニア大学の淡水生態学者ベルナデット・プルームス博士は、人間の世界から切り離された辺境の地だったと、思いがけない発見時のことを語った。

 「ストロマトライトを見つけた谷は、タスマニアの中でも辺境にあります。最寄りの町まで100キロも離れている場所です」

[画像を見る]
タスマニアで発見された生きているストロマトライト
credit:Rolan Eberhard(DPIPWE)
 研究チームは、べつに地球最古の生命体を探していたわけではない。世界遺産に登録されているタスマニア原生地域にあるこの湿地には、石灰石とドロマイトの層の上に砂の平原が点在しているという独特な場所だ。

 この地質が浅瀬の水質をわずかにアルカリ性つまり塩基性にしている。ところが、泥炭の多い土に囲まれた砂の平原は酸性だ。

 そこで、プルームス博士たちはこの特異な土地を調査し、淡水湿地の水源を調べようとしていた。その一方で、ほかの研究者たちはこの一帯の動植物相を記録しようとしていた。

[画像を見る]
淡水湿地で生きているタスマニアのストロマトライト
credit:Rolan Eberhard(DPIPWE)
黄緑色をしたマット状の奇妙な微生物の集合体を見つけたとき、はっきりと層になっているその形状から、ストロマトライトだとわかりました。

本当に驚きでした。
というのも、現代のストロマトライトは、非常に塩分の濃い水域、あるいは地熱で温められた淡水域にしかいないと思われていたからです。

pHが7.5前後(7が中性)とわずかにアルカリ性であることを除けば、湿地の水としてそれほど特異であるとも思えません。

このような少し変わった化学的条件下でもストロマトライトは見つかることがあるので、今回見つかったこの淡水湿地の水は、ほかの場所の水に比べて比較的ラッキーだったといえます。(プルームス博士)


【水中地下のカルシウム含有量と関係性が?】

 このストロマトライトを構成している微生物は、シアノバクテリア(藍色細菌)やクロロフレクサス、アルマティモナス、アルファプロテオバクテリア、プランクトミケスだったことがわかった。

 シアノバクテリアとクロロフレクサスは、両方とも太陽光をエネルギーに変える光合成を行う。アルマティモナスバクテリアは、植物や地熱環境に関係していることがこれまでわかっている。

 アルファプロテオバクテリアは、植物と共生関係を築いているし、プランクトミケスは水生細菌種のグループに入る。

 研究チームのひとり、ロラン・エバーハードは、こうした群落は他のストロマトライトで見られることはほとんどないと言う。

 この群落のユニークな構成は、ストロマトライトが生息している淡水の水源環境を反映している可能性はある。

 しかし、この彼らが生き続けている本当の秘密は、地下水中のカルシウム含有量が高いせいかもしれない。地下水は、石灰とカルシウムの岩盤を通り抜けるときに、カルシウムを吸収する。

 ストロマトライトが繁殖していた水源周辺では、死んだカタツムリや中身のない貝殻が山になっていたという。


[画像を見る]
iStock
 貝の多くはカルシウムが沈着することによって負担が大きくなる。だから、カタツムリは、カルシウムの多い水域では生きられず、無防備なストロマトライトを食べたり、その上を這いまわったりはできない。そのため、ストロマトライトが生き残る率が高くなったのではないか。

 ストロマトライトが、地球上でこれ以上繁殖していかない理由のひとつに、多細胞生物が進化したせいで、食べられてしまったという仮説をブルームスはたてている。

 タスマニアのストロマトライトは、幸運なことに特異な沼沢地の泉で生き残る抜け穴を見い出したのかもしれない。

 研究チームは、12月にもう一度、現地を調査する予定だ。この時期なら、ストロマトライトの成長速度や、湿地での生息期間ついてもっと詳しくわかるかもしれないからだ。

「地球の歴史という観点からも、非常に興味深い研究対象だと思います」プルームス博士は言う。

References:phys / Stromatolite/ written by konohazuku / edited by parumo
追記(2021/03/21)ストロマトライトの表記が間違っていた部分を訂正して再送します

記事全文はこちら:地球最古の生命体「ストロマトライト」 ごくわずかに現存する生きた個体を発見(タスマニア) https://karapaia.com/archives/52298963.html
編集部おすすめ