地球2つ目となるトロヤ群小惑星候補が発見される

地球の軌道上に2つ目のトロヤ群小惑星か/iStock
 地球の軌道上に潜む小惑星が発見された。これは、トロヤ群小惑星の可能性があるという。

 これまで、地球のトロヤ群は1つだけだったが、今回のものがトロヤ群であれば地球2つ目となる。
【宇宙の中で安定するポイント「ラグランジュ点」】

 宇宙には惑星と太陽の引力がある小さな天体の求心力とぴったり釣り合い、その天体をいつまでも留まらせる領域がある。ここをラグランジュ点という。

 2つの天体でなる系には、5つのラグランジュ点がある。地球と月には5つのラグランジュ点があり、地球と太陽にも5つある。そしてそれぞれがL1~L5などと呼称される。

 ラグランジュ点は便利なもので、宇宙船をそこに滞在させるために利用できる。たとえば今年10月に打ち上げが予定される「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は、地球と太陽のラグランジュ点L2に設置される予定だ。

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image credit:NASA/WMAP Science Team
【ラグランジュ点が捕まえた小惑星「トロヤ群」】

 だがラグランジュ点はそうした人工物だけでなく、小惑星をつかまえることもある。それが「トロヤ群」と呼ばれる小惑星だ。

 トロヤ群は、惑星の公転軌道上の、太陽から見てその惑星に対して60度前方あるいは60度後方、ラグランジュ点、L4・L5付近を運動する小惑星のグループである。

 もっとも有名なのは「木星のトロヤ群」で、9000以上の小惑星が発見されている。ほかの惑星の場合、海王星は28個、火星9個、天王星1個で、木星よりもとずっと数が少ない。そのため一般にトロヤ群と言った場合、それは木星のものを指すことが多い。

 また地球にもたった1つだがトロヤ群がある。L4にただよう300メートルほどの小惑星で、「2010 TK7」と呼ばれている。

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WISEが写した小惑星2010 TK7(緑で囲まれた部分)

【2つ目のトロヤ群発見か?】

 昨年11月と12月に観察された小惑星「2020XL5」は、もしかしたら地球2つ目のトロヤ群かもしれない。

 アマチュア天文学者トニー・ダン氏が『Minor Planets Mailing List』で発表した計算結果によると、2020XL5は地球・太陽L4を中心に、火星軌道に近づきながら、金星軌道を横切る軌道を描いているという。

 その起動はオタマジャクシを前方から見た形に似ており、これ自体がゆっくりと揺れている(「秤動」)。

青円が地球、その内側の白円が金星、外のオレンジ円が火星の軌道。2020XL5は、ラグランジュ点L4を中心にオタマジャクシを前から見たような軌道を描いている

 仮に2020XL5が本当に地球のトロヤ群だったとしても、金星に近づくことから、長期的にはそれほど安定していない可能性があるようだ。

 シミュレーションでは、2020XL5のクローンが200個作られ、長期的な動きが観察された。すると西暦4500年を皮切りに、6000年までにはほとんどがL4からL3に飛び出し、いくつかはL5で秤動するようになったとのことだ。

 なお、はっきりトロヤ群であることが確認されている2010 TK7もまた安定していない。これが地球のトロヤ群になったのは1800年前のことで、1万5000年後にはL4からL5に移動すると考えられている。

【まだまだ発見される可能性】

2017年にはJAXA「はやぶさ2」とNASA「オサイリス・レックス」がL4とL5を調査したが、何も見つからず、地上からの観測でも成果はないままだ。

 おそらく太陽系が誕生した当初からずっとそこにある地球のトロヤ群はないだろうとされている。

 それでも2010 TK7くらいの大きさのトロヤ群なら、これから数百個が発見されたとしてもおかしくはない。こうした調査を続けることで、太陽系のダイナミズムがさらに詳細に明らかになることだろうとのことだ。

References:Second Earth Trojan Asteroid Discovered - Sky & Telescope - Sky & Telescope/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:地球2つ目となるトロヤ群小惑星候補が発見される https://karapaia.com/archives/52299075.html
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