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旧約聖書によれば、神から洪水で地上の生物を消し去る計画を聞かされたノアは、あらゆる動物のつがいを方舟に乗せて世界の滅亡に備えたという。
今、地球上ではいくつもの脅威に直面しており、世界滅亡は決して絵空事ではなくなっている。
万が一のときに備えて、地球内生命体を復活させるためのバックアップを保存しておくノアの箱舟のようなものが必要だ。
そこでアリゾナ大学の科学者らが提唱しているのが「ルナアーク(月の箱舟)」計画だ。月の地下に存在する溶岩洞に、地球上の動植物、約670万種から採取した種・胞子・精子・卵のサンプルを冷凍保存しておこうというのだ。
【月の溶岩洞に方舟を設置するルナアーク計画】
溶岩洞とは、火口から流れ出た溶岩の表面が高まったあとも、内部だけが流れ続けることで形成される洞窟で月の地下には200以上の溶岩洞が存在する。
月の溶岩洞は、月面基地の設置場所としても候補に挙げられている。というのも、太陽からの放射線を防いでくれるシェルターとしておあつらえ向きでありながら、世界一の超高層ビル、ブルジュ・ハリファが小さく見えるほど広いものがあるからだ。
地球のものの場合、せいぜい地下鉄くらいの大きさで、地震やプレートの移動などによって徐々に侵食されてしまうが、月ではそのような心配がない。
くわえて、月の溶岩洞の内部は、マイナス25度の天然の冷凍庫ときている。痛みやすい生体サンプルを保存するにはぴったりの環境が整っているのだ。
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【月面に運び込まれたサンプルはロボットが管理】
とは言っても、月面にアーク(方舟)を作るのはそう簡単な話ではない。研究グループの計算では、地球上の生物670万種それぞれから50サンプルずつ採取し、月に運び込むとすると、少なくとも250機のロケットを打ち上げる必要があるという。
ちなみに国際宇宙ステーションの建設ではロケット40機が打ち上げられたというのだからその6倍以上だ。
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運び込まれた生体サンプルは、エレベーターシャフトから溶岩洞内の地下施設に持ち込まれ、冷凍保存モジュールに収納される。更に「量子浮揚(量子物理学の特性を使用して、磁気源上で超伝導体を浮揚させるプロセス)」なる現象を利用して、サンプルは金属面の上に浮かんだまま保管されるという。
また、収納されたサンプルは、磁力レールに沿って移動するロボットによって管理される。必要な電力は、月面に設置されたソーラーパネルで供給する。
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Lunar Pits and Lava Tubes for a Modern Ark
【人が消えた世界で稼働するシステムを管理するのは誰?】
だがはたして、世界滅亡後に保存されている遺伝物質から生物を復活させるのは誰なのだろうか? 生き残った人類なのか、それとも...
我々がこの世からいなくなっても粛々と稼働し続けるルナアーク・システム――そんなディストピア的未来も趣があるのではないだろうか。
この研究は、3月6日から20日まで開催される「2021 IEEE Aerospace Conference」で発表された。
References:'Lunar ark' might store DNA from millions of species in Moon's lava tubes/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:地球滅亡に備えて、月に数百万種の精子や卵子のサンプルを保存する「ルナアーク」計画が提唱される(米研究) https://karapaia.com/archives/52300138.html
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