植物が案外おしゃべりなのは知る人ぞ知る事実だ。残念なことに、そんな話好きな植物たちとコミュニケーションを取る方法はこれまでなかった。
だが、それももう過去の話だ。シンガポール、南洋理工大学の研究者が植物の電気シグナルを聞き、こちらから語りかけることもできる通信デバイスを開発してくれたからだ。
【植物の電気シグナルを受信し、こちらの意思を送信できる】
植物は周囲の状況を感知し、それに対応するするために、電気シグナルを発することが知られている。
『Nature Electronics』(1月25日付)で紹介されているのは、そんな植物の機能を利用して、電気シグナルを送受信することができる電極付き通信デバイスだ。
これをピタッと植物に貼り付けておけば、電気シグナルを通じて、こちらの意思を伝えることができる。その反対に、植物が発している電気シグナルを読み取ることだってできる。
電極は直径3ミリほどで、植物を傷つけることもないし、光合成を邪魔することもない。
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credit:NTUsg
【新素材でデバイスの接着が可能に】
ただ、実際に電極を通じて植物とコミュニケーションを交わすには1つ難題があった。それは彼らの電気シグナルがとても微弱ということだ。
それをうまく検出するには、電極をきちんと植物に取り付けてやる必要がある。しかしその表面には凹凸や生毛があったり、あるいはロウ分におおわれていたりして、薄いフィルムのような電極をぴたりとくっつけるにはなかなか難しい構造をしている。
そこでシンガポール科学技術研究庁などが開発した「サーモゲル」という新素材が使われた。
『Advanced Materials』(3月4日付)で紹介されているこの素材は、常温で液体からゲル状物質に変化してくれる。その粘着力は、一般的なヒドロゲルよりも4、5倍強力であるという。
これならじっとしているようで意外にもよく動く植物であっても、電極をぴったりくっつけて、ノイズに強い円滑なコミュニケーションを実現できる。
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NTU Singapore scientists develop device to 'communicate' with plants
【ハエトリグサがロボットハンドに】
実験として、ハエトリグサに電極を取り付け、スマートフォンから電気シグナルで葉を閉じるよう伝えると、見事1.3秒でお願いした通りにスッと閉じてくれたそうだ。
ついでにロボットアームの先端にハエトリグサを取り付け、これをロボットハンドがわりにして針金のような細い物をつかませることにも成功したという。
別にふざけているわけではなく、壊れやすい物体を優しくつかむことができる植物ベース・ロボットの可能性を探るための実験だ。
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【植物の声を聞いて、病気を診断】
植物用通信デバイスは、ほかにも病気を早期に検出する診断装置としての応用も考えられるという。
植物が発している電気シグナルから異常やストレスを検出できれば、症状が表面化する前にいち早く病気を察知して、早期に治療を行えるようになる可能性もある。
今、温暖化によって世界の食料の安全が脅かされているが、作物の生産アップにつながると期待できる早期診断システムは、南洋理工大学が掲げる持続可能な未来へ向けた最先端の技術的ソリューションの一例であるそうだ。
References:NTU Singapore/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:植物とコミュニケーションがとれる通信デバイスが開発される https://karapaia.com/archives/52300357.html