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賢そうな顔をしている。そんな印象を抱かせる人がいるのは確かだが、遺伝学的な立場から言えば、知性と顔立ちにはあまり関係がないようだ。
国際的な研究グループによって、ヨーロッパ人の祖先を持つおよそ2万人を対象としたゲノムワイド関連解析が実施された。
その結果、顔立ちや脳の形状に影響を与える遺伝子座(染色体やゲノムにおけるそれぞれの遺伝子が占める位置)が特定されたが、それらは認知能力とはまったく無関係だったと、『Nature Genetics』(4月5日付)で発表されている。
【脳の形状に影響する遺伝子を特定】
研究の中心人物の1人、ベルギー、ルーヴェン・カトリック大学のピーター・クラース教授は、顔の3Dモデルに基づいて遺伝情報を分析することで、顔立ちに影響する遺伝子を特定した実績がある人物だ。
今回、同教授が試みたのは、同じ手法を用いて、顔立ちだけでなく、脳の形状に影響する遺伝子を特定することだ。
そのために、UKバイオバンクのデータベースから2万人近くの脳のMRI画像と遺伝情報を入手し、シワが刻まれたクルミのような脳の形状と遺伝子との関係が分析された。
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【脳と顔の形状に関係する遺伝子は一部重複しているものの、知性と顔立ちの関係性はまったくない】
この結果明らかになったのは、脳の形状に関係している472か所の遺伝子領域だ。しかもそのうちの76か所は、以前明らかになった顔の形状に関係する遺伝子だったという。
なお、そうした脳と顔の形状に影響する遺伝子は、胚(つまりごく初期の赤ちゃん)の遺伝子活動を制御するゲノム領域にたくさんあったとのこと。
脳と顔の発達がセットで進むことを考えれば、遺伝子の重複は合理的なことだが、あまりにも複雑で、人間の多様性にこれほど幅広い影響を与えるとは予想外だったという。
同じくらい重要なのが、顔立ちと知性の関係性がこの研究によって見つからなかったことだ。脳と顔の形状を左右する遺伝子が重複していた一方で、それらは行動や認知に関係する遺伝子とまったく関係がなかったのだ。
つまりどんなに高度な技術を使ったとしても、顔の作りからその人の行動を予測することなどできないということだ。
顔立ちとその人の行動とに関係があることを裏付ける遺伝的な証拠はないことを確認しました。ですから、それと反対のことを言う似非科学的な主張から、私たちは距離置くとはっきり述べておきますと
とクラース教授は言う。
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【顔立ちと精神疾患にかかる可能性も読み取ることは不可能】
また顔の作りから統合失調症や双極性障害といった精神疾患にかかる可能性を読み取ることもできないという。
精神疾患のリスクを高める遺伝的変異と脳の形を決める遺伝子に重なりはあるようだが、それらと顔の形状を作る遺伝子とは関係がないとのことだ。
References:
・Genetic Link Discovered Between Face and Brain Shape
・A Genetic Link Between Face and Brain Shape/ written by hiroching / edited by parumo
なお、すでに人相から危険人物を検出できるAIカメラが開発されたというニュースもあったが、AIの機能と今回の説は真っ向から対立している。さてどっちが信じられるのだろう?
記事全文はこちら:顔で賢さは判断できない。知性と顔立ちには関連性がないことが遺伝学研究で明らかに https://karapaia.com/archives/52301044.html
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